戦禍の中国を離れ、インドネシア・ジャカルタで束の間の穏やかな時間を過ごしていた霞拳志郎らの前に、オランダ軍が迫っていた。そして、街では吸血鬼の噂が出回りはじめた。人々が誘拐され、ある実験が行われているというものだった。一方、拳志郎の前に、飛燕と同じ刺青を持ち、マントをかぶった男が現れた。男は突如、手刀を振り下ろし、拳志郎に襲いかかる。 「北斗の文句は……俺に言ええぇいいいっ!」 拳志郎の命を賭した最後の闘いが、今まさに始まった――。
マントに身を隠していたのは、極十字聖拳の流緋鶴。流飛燕を兄と慕う女拳士であった。飛燕の死を知り、その恨みを晴らすことだけが彼女の生きる意味となっていた。 一方、孤児たちと食卓を囲むヤサカとエリカの前に、謎の一団が現れる。突如、大音量で鳴り響くクラシックの調べ。駆けつけた拳志郎は、暗闇から現れたオランダ軍将校・コールと対峙する。 「僕は最強、最高の人間兵器を創造するのだ!」 人間を狂気へ導こうとするコールに拳志郎の怒りの拳が炸裂する。
コールにより改造された人間兵器たち。コールは自身にも光る指を突き立て、人体改造を行い、拳志郎に手刀を突き入れる。 「世界の『再創世』をおこなうのが目的だ〜!」 コールが最後に口にした『ミガドルの雷』『再創世』とは一体……!? 一方、エリカの前にはシメオン・ナギットが現れた。エリカを守ろうと立ちはだかるヤサカだったが、エリカとともに連れ去られてしまう。エリカを待っていたのは、驚きの事実とシメオンの恐ろしい目論見だった――。
「北斗神拳は人の心を救う拳。だから復讐など忘れろ。」 玉玲から飛燕の最期の言葉を聞かされ、緋鶴は気持ちのやり場に戸惑っていた。その一方で、拳志郎はエリカとヤサカの行方を懸命に追っていた。 地下宮殿に捕らわれたエリカは、ジェネシスの幹部から『ミガドルの雷』の真相を聞かされる。エリカの記憶にある『ミガドルの雷』と、父でもあり天才科学者でもあったロバート・アレントとは…!? 拷問受けるヤサカの命を守るために、やがてエリカはある決意をする。
拷問部屋では、ボロボロになったヤサカが鎖で繋がれていた。エリカを守るため、ヤサカは鎖を引きちぎり、天斗聖陰拳の遣い手であるシメオンに奥義を繰り出す。血飛沫が舞うシメオンとヤサカの闘いの最中、まばゆい光に包み込まれ、威厳を増したエリカが、『ミガドルの雷』の鍵について口を開きはじめた。その時、突如ジェネシスの地下宮殿の天井が崩れ落ち、霞拳志郎が現れた。 「てめぇ、悪臭が増したなあ」 拳志郎の眼が怒りで光る!!
エリカの前に、相まみえることになったシメオンと拳志郎。ついに北斗神拳と天斗聖陰拳、宿命の闘いが始まった。その混乱に乗じて、エリカを地下宮殿の廊下に連れ出したのは、ヒムカだった。エリカに、勾玉の在りかを執拗に迫る。果たしてヒムカの真の目的とは一体……!? 激しく打ち合うシメオンと拳志郎。互いに繰り出す拳を交え、シメオンの本質を見た拳志郎は引導を渡すのだった。 「お前の拳は大昔に止まったままだ。まるで脱皮しねえ蛇みてえにな……」
ジェネシスの宮殿は、自爆装置により崩壊が始まった。宮殿中に轟音が鳴り響き、柱や壁が崩落する。エリカと緋鶴を守る為、崩れ落ちてきた瓦礫の下敷きになったヤサカは爆炎に飲み込まれていった――。 一方、地下宮殿最深部にある研究開発室で、シメオンはヒムカの仮面の下に隠された素顔を知る。 「ヒムカか・・・・・・そんな名は、もういらぬ」 鋭く光る青い右目と金色に輝く左目のオッドアイを持つヒムカは、シメオンを欺き続け利用していたのだった。
鐘の音が鳴り響く高野山。北斗寺院の山門をくぐる者がいた。 霞拳志郎の父でもある鉄心の前に姿を現したのは、ヒムカの名前を捨てた霞拳心だった。かつて、拳心は崖から落ちて倒れていたところを鉄心に助けられ、鉄心のもとで修行を積んでいたのだった。鉄心と対峙する拳心から語られたのは、かつて味わったこの世界のあり方への大きな絶望から生まれた、新たな世界の切望、『再創生』への道であった。 「堕ちたな、拳心……」 鉄心から闘気が放たれる。
北斗七星の脇で蒼く輝く死兆星。夜空を見つめるエリカは、その星から飛燕とヤサカが自身を見守ってくれていると健気に信じていた。そんな折、拳志郎の屋敷に傷ついた羅門が勾玉を持ってやってくる。 父・鉄心が、拳心によって殺されたというのだった。拳志郎は父の最期を聞き、拳心に思いを馳せる。 拳心こそが、拳志郎が幼き頃より最も畏怖すべき存在だった。 再び、拳志郎の前に現れた拳心。 北斗の星の宿命のもと、拳志郎と拳心の死合いがここに始まる!!
「俺はこの腐った世界を終わらせる! この俺がリ・ジェネシスするのだああっ!」 拳心は放浪で目にした世界の身勝手さや愚かさを、この世の真実として拳志郎に語る。 拳心を前に防戦が続く拳志郎を見かね、エリカは強い覚悟とともに拳心に歩み寄る。そして2人は一陣の風とともに、こつ然と姿を消してしまう。 拳心との闘いで秘孔を突かれた拳志郎の命の灯火も消えようとしていた。拳志郎は拳心との決着に備え、羅門に延命の秘孔を突かせるのだった。
ノハァル・ナハ遺跡の玉座で、大小の勾玉に呼び起こされたエリカの記憶。核分裂装置の設計図は拳心が見下ろす羊皮紙に投影されて、徐々に描かれていく……。 自らの死を願うエリカの悲痛な願いを受け止める拳志郎は、エリカの額に優しく秘孔を突いた。 拳志郎の目から一筋の涙が頬を伝う。 「俺は、目の前の少女の笑顔を守る。闘う理由なんて、それで充分だ」 第62代北斗神拳伝承者としての最期の闘いが、いよいよ始まった。
天斗聖陰拳と北斗神拳を合わせた拳心の秘奥義が、拳志郎を呑み込む。 「これが最期の一撃……俺の歴史は、今ここから始まる!!」 「ならば俺は、この一撃に朋友の思いをかける……!!」 互角の拳を持つ強者相闘う時、その両者の頭上に死兆星輝く。 北斗の宿命のもと死合う拳志郎と拳心、2人の闘いの行方はいかに――!? 拳志郎の最期の闘いがついに決する!!
北斗史上最強の漢 “霞拳志郎”。運命に導かれし者たちの新たなる闘いが始まる!!
©原哲夫・武論尊/NSP2001,©蒼天の拳2018