Duka

Sweet Home -俺と世界の絶望-のDukaのネタバレレビュー・内容・結末

Sweet Home -俺と世界の絶望-(2020年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

冒頭から怪物だらけの世紀末感…
ジャンルで言うとスプラッタホラーかな。

2ヵ月前に遡って、
韓国のとある集合住宅。
ボロいし貧困層向けの雰囲気です。
不気味すぎる管理人、住民達。
仕事をサボって寝る管理人、
怒鳴っていばりちらす売店のおやじ、
管理人に腐った魚をあげる保育園長、
一人引っ越してきて死ぬことばかり考えている高校生、
不仲な兄妹・妹はケガをしたバレリーナ、
子供を亡くしベビーカーを押し続ける母親、
男を監禁・暴行するヤクザ…

流血とか、生身の人間の生々しい暴行描写があって、
しかも怪物もでてきてエイリアン要素も満載で、
どんだけ詰め込むねん、って思うのですが、
韓国のドラマって本当に人の心を描くのが上手い。

このドラマはエイリアンものの単なるホラーかと思いきや、
人の欲望がテーマです。
人の欲望が人を化け物たらしめる、絶望の世界。
そりゃ絶望ですよ、欲望の無い人間などいないから。ゾンビみたく感染しないけど、余計怖い。
いつ誰が己の欲望に負けて化け物になるか分からないわけで。

人の心理描写が秀逸で、ホラー要素とか怪物も充分怖いのに、結局人間の欲望が渦巻く社会自体が化け物の巣窟だっていう、途方もない絶望感が漂うお話で。
お話しがすすむにつれて、色々な人の過去や思いが描かれていって、引き込まれて感情移入するんだけど、理解していくと冒頭のシーンを思い出してしまって、結局一人ずつみんな怪物化するのかと思うと目を背けたくなるし、色々な人の悲しい過去が描かれると思うと先にすすめなくなる、そんなめちゃくちゃ重いドラマです。

このドラマを見ていてちらついたのがこの間見たばかりの「今際の国のアリス」。
神だか宇宙人だかに翻弄されているようなありえない展開、突っ込みどころのある描写、救いのない、終わりの見えない物語。
そんな部分は重なるし、主演俳優もさわやかイケメンで、顔も雰囲気も似てる。
どちらも漫画原作だそうで、CGだって両方お金かかってる。

ただ、アリスは完全に完敗。
何が違うのか考えてみた時、徹底的に違うのは心理描写。
悪いやつもいいやつも、色々抱えていたり、
人を殺すからって絶対悪ではない。
そこも同じだけど、なんでこんなに差がつくんだろう。
アリスは本当に軽々しくて薄っぺらくて、人がどれだけ死んでも泣いても全く心に響かないし、友情とか何とか言われても へー、そう、で?って感じだけど、
こちらは冒頭から一貫してそれぞれの人間の描写がしっかりしているから、キャラクターそれぞれが本当に生身の人間としてそこに生きているように感じて、だからこそ見ている側も苦しくて怖くて悲しい。
共感すればするほど苦しくなる。
ほんと、残酷で救いようのないドラマです。
非常によくできていて、面白いからこそ、先に進めなくなるって、ドラマを見ていて初めての経験かも。
ウォーキングデッドのS3くらいまで、本当に面白かったあのへんの雰囲気がありますね。

怪物と、怪物になるかもしれない恐怖と、水・食料など生命の危機と、
十分すぎる極限状態なのに、次々と災難が。
少女が虫垂炎になり、麻酔すらない状態で手術をしたり、
常に冷静な態度で皆を守っていた人が怪物と激闘の末に命を落としたり。
そして軍用車で閉鎖のマンションにつっこんできたのはならず者達。

人を人と思わない悪行ぶりで、仲間はあっけなく殺されて。
その後も傍若無人、やりたい放題。
悪行の限りをつくす感じの集団です。
怪物よりもゾンビよりも生身の人間が一番恐ろしいのは、
ウォーキングデッドの展開と重なります。

しかしこのドラマ、伏線をにおわせない。
におわせない伏線なんてあるんだ、って驚きました。
ドラマの伏線はいつ回収されるんだろうって、思いながら見るものだと思ってました。
視聴者を信頼しないとできないつくりだと思う。真剣に見ていないと気付かないから。
本当に細部まで物語を作り込んでいると思う。
回想の入れ方も、人の思いを画に表すのも本当にうまい。
画にも色にもこだわっているのがよく分かる。

エンディング、続きが本当に気になります。S2が待ち遠しい。
Duka

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