ユンファ

キャシアン・アンドーのユンファのレビュー・感想・評価

キャシアン・アンドー(2022年製作のドラマ)
4.8
トニー・ギルロイの書くシナリオは元々好きだが、彼がスター・ウォーズに一切の愛着がないのは有名な話なので、良くも悪くもスター・ウォーズらしさが皆無。
シリーズの熱心な信者としては、人間ばかり出てくるのは許せない。異形のエイリアンやドロイドをもっと出すべきだ。何故ならそのほうが面白いから。
そんなことも分からない奴にスター・ウォーズを作る資格はない…と思う。
思うのだが、それでも最高に面白い。

「反乱者たち」が20分で描いた話を3時間かけてやっている。
テキトーな作戦にも関わらず、運の良さと機転で全て上手くいってしまうスター・ウォーズの伝統に逆らい、痛快さや爽快さ、テンポの良さや分かりやすさを全て捨ててまでディテールを描いている。
帝国の基地に侵入するには…どのくらいの人数で、いつ、どうやって実行に移し、不測の事態にはどのように対処するのか。撤収までの時間は、見張りは何処に何人いるのか、兵士に化ける際はどのくらいの速度で歩き、武器はどう持つのが正しいかなど、これまでシリーズが疎かにしてきた無数のディテールが描かれる。

これは、スター・ウォーズファンではないトニー・ギルロイだからこそ作ることの出来る全く新しいスター・ウォーズだ。
クリーチャーやドロイドといったスター・ウォーズの外面的な魅力を捨て去り、生命よりも自由を重んじるルーカスの精神性を継承すること。
スター・ウォーズらしさは微塵もないが、こういうスター・ウォーズを心の何処かで望んでいた。
正直言って、ディズニー買収以降のスター・ウォーズには心が折れそうだった。
ありがとう、トニー。

キャシアン・アンドーはスター・ウォーズの伝統の外側からやって来た。
それでも、誰が何と言おうが、彼は、彼の物語は、彼の戦う世界は、紛れもなくスター・ウォーズだ。
屈指のスター・ウォーズマニアであるオレが断言する。
オレもあなたも誰だっていつだって、遥か彼方の銀河へ旅立てる。
ルーカスが灯した希望の光は、今もまだ行くべき道を照らしてくれている。
ユンファ

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