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息をひそめての8637のレビュー・感想・評価

息をひそめて(2021年製作のドラマ)
3.9
「コロナが落ち着いたら会えるといいね」みたいな話を、一年前からずっとし続けている気がする。
抜け殻みたいな年だった。結局コロナ禍とは何だったのか。

栄えた街がいつか終わる。そのいつかが今ってだけ。だけどまだそこにある活気。流行が変わって、歪みに耐えきれず無くなっていくもの。それを支持していた少数の人たちの思いはどうなってしまうのだろう。
体に触れ合ったり、皆で集まることを安息とする人達にとってはとても苦痛な時代だったのかもしれない。反対に、共有する時間が増えたことで見つかる二人のズレもある。遠く感じるのは智識の所為か、感情か。

タイトルから派生された少しのモノローグで語られるキャラクター像から、全てを感じ取れる。これは本人が詩人でもあり、過去作の風味も取り入れながら描かれた中川監督の世界。五時のチャイムの流れ方と合唱シーンの手持ちカメラが好き。
5、6話が唯一明確な連作で、同じシチュエーションを描く作品って繰り返しで飽きがちなのだが今作はスレスレぐらい。
あの世界の2021年11月はパラレルかもしれない。まだ困難な状況が落ち着いていないからこそ今観るべき、心の中にちょっとした充足感を得られる一話約三十分のオムニバス。
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