自家製の餅

そしてサラは殺された シーズン1の自家製の餅のレビュー・感想・評価

4.0
メキシコのサスペンスドラマ作品であり、ラテン系らしい夏のシーンからS1-1がはじまる。名曲"Livin' la Vida Loca"が軽快に響く中、異変が事件に変わり、タイトルバックの後、暗い刑務所のシーンとなる。この冒頭のわずか4分で引き込まれ、観終わるまでそう時間が掛からなかった。

主人公が兄妹で付き合っていた富裕層一家とのバケーションで、妹サラが事故死した18年前。兄アレックスが無実の罪で投獄されてから、出所した現在。物語は交互に挿入される。現在は時間通り進むが、過去は記憶のように断片的に、時間軸も前後しながら、終盤に向けて全体像が明らかになる仕掛けがとても上手い。

本作と同じくNetflixにてスペインの『ミダスの手先』や『ペーパーハウス』も数ヶ月前に観たが、スペイン語圏という共通点があるせいか、アメリカやイギリスあるいはフランスとも異なる作品づくりに惹かれる。それがなにかは具体的に言うのは難しく、雰囲気でしかないが、資本主義的なスケールから距離を置いた感じ、また善悪の描き方にポリコレが過剰に介入しすぎていないことが効いているようだ。

シーズンとしての落としどころをうまくつくりつつ、クリフハンガーではなく次のシーズンに繋げる最終話の展開はアツかった。これまでの物語の意味を書き換えるように事実を出す脚本の構成力がものすごい。
騙されたと思って観てみてほしい。



未見の方も多くいらっしゃると思いますので、詳細について触れることは少々憚られますが、サラが、何故セサルと関係したのか。あるいはソフィアも。人間的な力か、権力か。裏の日記が出てくる衝撃も、行動の細部にあるメンヘラ感から察することができた。「被害者」という結果は、必ずしも「悪ではない」ということを示さない。家族と悪事、誰の策略か。意図する、しない悪のちがいなど、人間の様々な側面が描かれていた。