開明獣

地下鉄道 ~自由への旅路~の開明獣のレビュー・感想・評価

地下鉄道 ~自由への旅路~(2021年製作のドラマ)
5.0
原作者のコルソン・ホワイトヘッドは黒人であり、自分達のルーツにあたる人々がどんな仕打ちを受けてきたのかを世に問いたいと常々思っており、それが結実したのがこの「地下鉄道」。見事に栄えあるピューリッツァー賞を受賞しており(ハヤカワepi文庫)、次作の「ニッケルボーイ」も再びピューリッツァー賞を受賞するなど、今、米国でもっとも注目されている作家の1人である。

時節柄、Black lives matterが盛り上がったことも影響しているだろうが、この根深い問題を真っ向から取り上げて、問題提起をすることは現代のアメリカ社会において大きな意義がある。

確かに毎回、しんどい場面の連続で、観続けるには中々の胆力が必要かもしれないし、あまりにも辛くてやめてしまう人が出てくるのも仕方のないことだと思う。心の優しい人ほどそうであろう。

だが、これは今現在アメリカ社会で起こっていることの起源の話であり、今も無くなってない現実の話しなのだ。ここから目を背けてしまうことは、多様性を拒否してしまうことにもつながってしまう。

日本でも、極右の外国人やLGBTQ排斥を執念深く主張する人間が後を絶たないどころか、政権の中枢にポストを占めていたり、国会議員や地方議員に当選していたりする。下手をすれば同じことをしでかしかねないと危惧するばかりだ。

「ムーンライト」でアカデミー賞作品賞を受賞し、ジェームズ・故ボールドウィンの傑作、「ビールストリートに口あれば」を撮った、バリー・ジェンキンスが手がける映像と演出は、映像作品としてもクオリティの高いものだ。

目を背けていては、現実を把握することは出来ないことを示してくれる良作。Amazon Primeで。
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