IrateBeggar

前科者 -新米保護司・阿川佳代-のIrateBeggarのレビュー・感想・評価

5.0
元殺人犯の人の、朴訥とした優しげな青年に見えて(それも嘘ではない)だんだんと暴力性と頑なさ、衝動性と幼稚さが露呈してくるのがホラーだった。他の映画だと爽やかでかっこいい大東俊介さんが、小柄な有村架純さんと隣にいると長身なのも相まって得体の知れない怪物に見えて、後半の二人きりのシーンはヒヤヒヤした…。なんか弾みで殺しそうで。
その緊張感を序盤では全く出さずに、例の件発覚後から急に出してくるのがすごい。特に何か変わったようには思えないのに。最初の面談では怯えた草食動物だったのに、最後には歯剥き出し狂犬にしか見えない。匠の技だ。
薬中の人は、思考の飛びかたが普通ではないけど、でもどこかで触れたことのある普通じゃなさでリアルだった。タトゥーがあるから銭湯入れないが言い出せないので、公園の手洗い場で髪を濡らして銭湯に行ったと偽装しようとするシーンが良い。
元々何かに依存してなきゃ生きていけない人なのかもしれない。主人公に優しくされて、主人公を神様と評するけど、自分以外に優しくしたら好意と同じ熱量で嫉妬する極端さが危うい。
対照的な性格のみどりは出自を主人公を信用するまで明かさなかったのに、たみ子は何度も「私は父に殴られて育ったから」と言うのが怖かった。

みどり以外の2人はバッドよりのオープンエンドで更生は一筋縄ではないんだなと…。

個人的にはドラマ版のほうが気に入ってます。話にリアルさと生々しさがあって、より真摯に感じるから。映画版は演技は素晴らしいですが、ちょっとドラマティックすぎるような。
短いけどずっしり来る。全然直接的な場面はないしあえて避けてる感じもあるし、ほっこりシーンは毎話あるのに、めちゃくちゃヘビー。でもメッセージがはっきりしていて主人公の誠実さに救われる。繰り返し見ても飽きないドラマ。
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