ろく

前科者 -新米保護司・阿川佳代-のろくのレビュー・感想・評価

4.3
犯罪を犯してしまう人って普通より「生き方の下手」な人だと思ってしまった。

よくあるじゃない、犯罪者が厳罰にすべき、いや犯罪者の人権を。どっちの意見も反対に見えて「わかりやすい」ところで共通点がありすぎる気がするんだよね。

それは法としてそうしないといけないのは解るんだけど、それではそれぞれの事件の問題が抜け出てしまう気がするの。一貫性がなくてもその事件に対しどれだけ「わかる」かが大事なのではとも思うの。

全部で3人の前科者が出るんだけど、どの事件も一概に「悪い」といえないのがきつい。そしてそれは主役の有村もわかっているんだよね。だからなるべくそれに寄り添って保護司といういわばボランティアのようなことを行う。

いや有村の存在感が凄いのよ。マジメで融通が利かないんだけどたまに面白いというなんて役をやるんだよって観ていて思った。丸メガネにひっつめの髪と色気ゼロで挑んだ今作。いや癖になるよねえ。すっかりはまってしまった。

とくに3作目の麻薬中毒のデリヘル嬢。これはきつかった。古川琴音の「生きるのが下手な女」にぐいっと引き込まれる。「お風呂に入ったら」と有村に言われ、銭湯のチケットをもらう古川。でも彼女はタトゥーがあるので銭湯で入れない。しかし断れないので公園で髪を洗う。なんだろう、この切なさ。いるんだよ、自分で断れない人が。僕の身の回りにもいる。そしてそんな人を当たりまえのように「使用する」人もいるんだ。さらにはそれを止められない僕までいるの。だからか、これは観ていてつらかった。

全てそのような人に優しくしろというわけではない。でも少しでも「理解」してあげることは必要だ。「犯罪を犯すなんて信じられない」というのは想像力の欠如でしかないと思う。
ろく

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