おさかな

THE SWARM/ザ・スウォームのおさかなのネタバレレビュー・内容・結末

THE SWARM/ザ・スウォーム(2022年製作のドラマ)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

海洋×サスペンスということで視聴。
とにかく映像が美しく、また画的な迫力がすごい。できれば映画館で見たかったなと思えるほどの作品だった。
ストーリーは少し難解で、以下は個人的な解釈を含む感想。
最終話を配信当日に見ていたのに噛み砕くには時間が掛かる作品だった。


まず海の「異変」の始まりが「クジラ」からというのは危機感のあおり方として凄まじいな、と思いました。海といえば魚って感じなのに、わざわざ「哺乳類」を選んでいるあたりが姑息(褒めてる)で不穏の煽り方が満点。
さらに、悲劇が「ホエールウォッチング」という「非日常」から始まり、やがてじわじわとロブスターや蟹といった「陸上での食生活=日常」へと侵食していく様も、おお…となります。
また、このときにもロブスターや貝を経てから、自ら陸へあがれる「蟹」をチョイスしているのも、この後に来る「津波」へのメタ的要素として、逃げ場のなさを予感させる秀逸さだなぁと思いました。

そういった海洋生物の異変を経てから、津波が押し寄せる衝撃的な5話ラスト。
迫力がありすぎる映像は、ちょっと個人的に注意書きがほしかったなぁと思う点ではありました。(日本版だけでもお願いしたかったな)

この悲劇のあとに、主人公たちは調査船に乗り込むわけですが、このあたりで初めて「未知の生命体」というのが登場して、「あ、そっちのジャンルのドラマなんだ!?」と驚いたのはあります。
何らかの企業とかの陰謀系かと思っていたので…ここから一気にイールにまつわる話になっていくんですが、この前後で結構ドラマのジャンルが違って見えるのはあるなぁと思いました。
もうちょっと序盤からイールの伏線というか、「未知の生物」的なものを匂わせてくれてもよかったのでは…。

そしてここから、畳み掛けるみたいにイールについてガンガン明かされていって、チャーリーがイールと融合して、ラストの何にもない波打ち際で終わる本作。
このラストについては、とにかく解釈するのに時間がかかりました。
ただ個人的な解釈としては、人類滅亡エンドで、「新たな生き物」が別の進化論を始めるのかなぁという考えです。

まず調査船内でのパートで、ナイジェリアが壊滅状態であることがミフネによって明かされたシーン。
あそこで「あ、だめだ」となったんですよね。ナイジェリアといえば、アフリカの国なんですが、アフリカといえばホモ・サピエンスの起源。
そんな場所「だけ」わざわざ「壊滅的」だと描写する意図を考えると、そういう結末に向けるのかなぁと思いました。(ただ西アフリカのナイジェリアを壊滅させた理由はちょっとわかんない)
また、冒頭で最初の異変として登場したクジラは、海洋生物であり、哺乳類であり、また進化の過程で陸から海へと返った生き物。
この辺で、人類は終わって海に返るのかなぁ、と受け取りました。
なので、イールの光のなかで海に沈んでるチャーリーは、「海に返る人類」そのもの。

そして、イールの光は螺旋を描いて、チャーリーとイールの「融合」を描いたあとに、また「進化」を始める浜辺でラスト、ということなのかな~という解釈です。
調査船内でのシーンで、イールに進化論で交信を試みるシーンや、イールはかつての進化で分かれた存在みたいなとこがあったと思うので、そのへんも伏線だったのかもなーと思っています。

人間にとって「共に生きていく」というのは、それぞれ海と陸で互いを侵害しないように共生していこう、という意味合いだったと思うんですが、イールにとっては「同じ存在になる」ということだったのかも?

海を守るためという大義名分があるとはいえ、海洋生物に寄生して自身の思惑どおりに人類へ攻撃を仕掛けるイールは、「ケタミンは武器になるのか?」とこの期に及んで武装しようとしていた人間と、その傍若無人な振る舞いがそっくりで、きっと仲良くできるかもなって思いました。
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