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ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル シーズン1の傘籤のレビュー・感想・評価

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HBO制作の海外ドラマ。シーズン2がエミー賞にノミネートされていたのでU-NEXTで鑑賞してみた。副題に「諸事情だらけのリゾートホテル」とある通り、あっちこっちで問題が頻発していく。主に3組の客に焦点を当てながら、客たちとホテル側の人間模様を描くってのが基本的な流れで、白人セレブの無自覚な優位性を悪意たっぷり、皮肉たっぷりに捉えたブラックコメディ。なのでコメディではあるけれど、気楽な気分で観るよりも、胸糞な気分になるためにある作品と言えそう。なんでかっていうとこのドラマ、いわゆるクソな白人セレブが酷い目に遭うっていう単純な話だけじゃなくて、そのすぐ近くにいるマイノリティである「黒人」だとか「女性」の無自覚な狡さと悲しさを描いているから。例えばポーラという女性は自身が安全圏にいて、同行している白人家族を歴史的背景を引き合いに出しつつ否定している割に、自身が特権的なポジションにいること自体は疑問に思わず、最終的には自分のキャリアを守るため白人家族に迎合する。対する白人の家族もだいぶ問題が多いから一概に"悪"とも"善"とも言い切れないところがミソで、そういう人間関係の「歪み」がいや〜な感じでずっと続く。それは逆立ちしてもひっくり返すことが出来ない「白人社会」の上下関係と、そこで生きていくことを選択せざるを得ない人たちの悲しさが、拭いきれずそこに存在し続けていることを意味しているのだろう。明らかに笑わせにきてるな、というシーンもあるけれど、大笑いするほどではない絶妙なラインを保っているのはきっとそのせいで、このドラマが「コメディ」であると同時に「サスペンス」でもあることを意味している。
個々の登場人物が抱える悩みとか人間性ひとつひとつは大したことには見えないし、なんなら可愛げさえ感じるだろう。母親の遺灰を中々捨てられないマダム、父親がゲイであることを知った中年の父親、泊まる部屋を間違えられたことをいつまでも根に持つ新婚旅行中の男。「あー、いるよね」あるいは「あー、あるよね」くらいの気持ちになるのだけど、それが積み重なっていくことで、ストレス値は急上昇してしていき、ドラマが生み出されていく。「社会の縮図」なんて雑な言葉を使いたくはないけれど、やっぱりこのドラマで行われていることは、そういった問題の可視化であり、「白人が高級リゾートホテルに泊まる」、それだけの状況をここまで悪意を込めて「滑稽」に描いていることにこのドラマの新規性はある。
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