社会のダストダス

エイリアニスト NY殺人ファイル シーズン1の社会のダストダスのレビュー・感想・評価

3.9
「19世紀、精神病患者は人間の本質を失っていると考えられた。精神病の研究者を“エイリアニスト”と呼んだ」

最初で最後かもしれないドラマレビュー。
ダニエル・ブリュール、ルーク・エヴァンス、ダコタ・ファニング主演。
ケイレブ・カーの同名小説を原作とするテレビシリーズ。
1896年のニューヨークが舞台で、当時は異端とされた犯罪心理学と法科学を用いて連続殺人犯を追うサイコ・サスペンス。

本国では続編小説「エンジェル・オブ・ダークネス」を原作としたシーズン2がもうじき放送される。(日本は—?)

序盤のあらすじ♪
建設中の橋で女装した少年の惨殺遺体が見つかり、犯罪心理学者のDr.ラズロー・クライズラー(ダニエル・ブリュール)は友人でニューヨークタイムズ紙の挿絵画家のジョン・ムーア(ルーク・エヴァンス)に殺人現場の模写を依頼する。クライズラーは自身の患者を殺された未解決事件との共通点を見つける。
大学時代の同期で新任の警察本部長のルーズベルトを通じて秘書のサラ・ハワード(ダコタ・ファニング)を連絡係として迎え、特捜班を内密に発足する。

セオドア・ルーズベルトって大統領になる少し前は警察官だったんだ、へぇーってひとつ賢くなった。ストーリー自体はフィクションだけど、当時のニューヨークを支配していた上流階級の鼻持ちならない連中も実名キャラクターで登場したりする。

メインの視点人物はダニエル・ブリュール演じるDr.ラズロー・クライズラー。メインの主人公だけど、主演3人の中では自分的には一番馴染みが薄い俳優さん、「イングロリアス・バスターズ」や「コロニア」に出てたっけ。
ダニエルの奥さんが心理学者らしいので、役作りにも反映しているのだろうか。正義感は強いものの、犯人の犯行動機の究明への心理学者としての関心が強い為、サイコパスと紙一重な思考の持ち主に思えてくる(精神科医役って何でサイコパスが多いんだろう)。最終話まで観ると一番何もしてなかった疑惑がある。

ルーク・エヴァンス演じるジョン・ムーアはある意味本作のヒロイン。豆腐メンタルのアルコール依存症で売春宿通い、フィアンセを別の男に獲られるなどいろいろ可哀そうな人。ラズローとは友人だが彼の心理学的興味からしばしば傷心をほじくり返されるので、観てる側としては一発殴り返してほしくなる、でもそれでも挫けずについていく忠犬。
心理学者や警察関係者が中心の特捜班の中では一番普通の人だが、ラズローとサラの緩衝材として機能している、要するに苦労人。
彼もまた上流階級の人間だが、作中屈指の善人で聖人。

ダコタ・ファニング演じるサラ・ハワードは、ルーズベルト警察本部長の秘書でニューヨーク初の女性警察職員、職員であり警察官ではない模様。しかしニューヨーク市警は腐敗しきっているので、数少ないまともな警察関係者、他の警察官が全員税金泥棒に思えてくる。警察らしい仕事をしているのはミス・ハワードと二人のユダヤ人の鑑識くらい。
ラズローに対して(大部分は)敬意をもって接しているが、たまに彼のプライドを傷つけることを言うので、しばしばチームに緊張が走る。

全10話で構成されるリミテッドシリーズ。一人の連続殺人犯を1シーズン使って追いかけていく。毎話事件が起きてるわけではないので大きく話が動いたり動かなかったり。
犯人の正体を考えるよりも、警察組織や貴族階級に対する立ち回りやダニエルさんとダコタが癇癪起こして喧嘩したり、ルーク・エヴァンスのヒロイン属性を楽しむヒューマンドラマと言える。

忘れた頃に起こる新たな殺人で、少年が無残な姿で発見される。目を抉られ手首が無く、性器も切り取られているという特徴がある、いうまでもなくグロい。
犠牲になる少年は移民も多い売春宿で働く男娼で、警察はロクな捜査もせず貴族階級の犯行だと分かると揉み消しにかかる始末。
そして明らかになる真犯人を見たとき「…誰だこいつ」と思うこと必至。
サスペンスとしては多少間延びした感はあるけど、ダコタファンとしてはたくさん御姿を拝めて嬉しい限り、続編も気長に待ちます。