社会のダストダス

フォールアウトの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

フォールアウト(2024年製作のドラマ)
4.8
ウェイストランドの黄金律

Amazonオリジナル作品。原作のフォールアウト・シリーズがメチャクチャ好きだったので、楽しみにしたい気持ちもありつつ、正直なところ不安もかなり大きかった。Netflixあたりならノウハウや実績も多いけど、Amazonだと大作になるほど微妙になるイメージがあり、そのうえポリコレにもそれなりに目覚めてしまっているので危険だと思っていた。

嬉しいことにその不安は完全に杞憂に終わった。『パーソン・オブ・インタレスト』などのジョナサン・ノーランや、原作からはベセスダ・ゲーム・スタジオのトッド・ハワードが製作に参加し、世界観の再現だけでなくシリーズとしての整合性まで取られ、番外編としての別物ではなく、実写で展開される本物のフォールアウトが実現した。

フォールアウト3⇒ニュー・ベガス⇒4と、青春の大半をシリーズに捧げてしまったフォールアウト廃人にはとってもS.P.E.C.I.A.Lな完成度の実写ドラマ(フォールアウト76はタイミング逃してやってないけど)。本作は正史に含まれるということで、事実上のフォールアウト・シリーズ最新作ということになる。

第2次世界大戦後に起こった原子力の産業革命により、異なる歴史を歩んだ世界観。2077年に起きた“グレート・ウォー”で、地上のあらゆる場所を焦土と化すほどの核弾頭の雨が降り注ぎ、文明社会は崩壊してしまう。200年以上経ち、ウェイストランドと呼ばれる世界になった地上で主人公は、いろんな変態とか狂人とか変態などと出会いながら旅をすることになる。以上が大体のシリーズ作品で共通する流れ。

シリーズの特徴である、ノスタルジーとアポカリプスとバイオレンスはそのまま継承。ゲームを知っている人ならゲームのまんまだと感動し、逆にドラマから入った人はゲームをやると本当にこんな狂った世界なんだと衝撃を受けると思う。

ハリウッド、LAを舞台にした本作はゲーム未経験でイメージのつかない人に説明するなら、『マッドマックス』×『オッペンハイマー』×『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』という混ぜるな危険な属性を持っている。舞台となる土地にちなんだエピソードとかが入るのが恒例だけど、今回は実写作品だからハリウッドになったのかな。

地下シェルターVaultから誘拐された父親を捜すために地上へ出てきたルーシー(エラ・パーネル)、ブラザーフッド・オブ・スティールという組織の末端兵マキシマス(アーロン・モーテン)、放射能を浴びたことでグールになった賞金稼ぎ(ウォルトン・ゴギンズ)がいて、主人公格のキャラクターは3人いる。

これは遊ぶ人によってプレイスタイルや攻略手段が大きく変わることをドラマで表現するためだと感じる。各キャラクターの道徳的価値観(カルマ)は、ルーシーが善、マキシマスが中立、グールの男が悪といった具合で、それぞれのロールプレイは異なる。

ドラマの話数をもってしても、原作の要素を網羅しきれないと判断したのか、1シーズンで無理にネタを詰めすぎなかったのも良かったと思う。今作だけでも世界観を再現したというには十分だが、それもスーパーミュータントやデスクローといったアイコニックなクリーチャーを出さなかったので、次シーズンはさらに酷いことが起こるという期待が高まる。

ゲームと実写版が世界観を共有している作品なんて今まで記憶にないけど、これは本当に上手くやったと思う。倫理観がイカれた人たちしか出てこないけど、みな今日を生きるために戦っている、カントリーソングに乗せてありったけの銃をぶっ放す光景はまさにフォールアウト。

シリーズのお約束を散りばめながらも、ネタはまだまだセーブしている感もあるので、シーズン2はハードル上げて期待します。