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ONE PIECEのhiroのレビュー・感想・評価

ONE PIECE(2023年製作のドラマ)
4.0
設定4/脚本4/役者5/映像音楽4/個性3

感無量。もっと面白い作品はあるのでこのスコアだが、大好きな『ONE PIECE』が、見るに耐える形で、世界から愛される実写作品としてリメイクされたことに心から感謝。

端折ったエピソードは多いが1〜8話の構成がしっかりドラマになっており、脚本のクオリティが○。セットや小物から原作愛を感じる。役者陣、再現度も高いんだけど、シンプルに演じてて楽しそうだなと思った。
気になった点。全体のテンポはいいけどワンシーンずつの展開が重たい。カット割の問題?わざとなのかも。
ウソップを仲間にしたいと思わせるエピソードが抜けてたのだけは残念。

以下、思いが止まらなすぎてだらだらと。(ネタバレあり)

===
自分は漫画版ONE PIECEの大ファンだが、アニメ等の派生作品はなかなか好きになれなかった。

1つは、若い頃は原作至上主義から抜け出せなかったから。原作と少しでも違う点があるだけでストレスだった。まだ学生だったら本作も☆1をつけてたかも。今はメディアごとに適した表現があることを知ってるので、この問題はある程度解消した。

もう1つは、作品に対する愛よりカネの臭いがするから。愛を持って携わってる人がたくさんいるのも知ってるし、カネがまわらないと作品が続かないのもわかってる。それでも「またavexの売り込みか…」「また広告塔に使われてるわ…」「作画棒人間やん…」って、多くの視聴者に思わせたら終わりじゃん!関係者が多すぎてうまくまわらないんだろなとは思いつつ、ヲタクとしてはやはり受け入れられなかった。

この問題も、原作者が指揮をとるようになってから解決し始めたけど、その後できたオリジナル映画もさほど好きになれなかった。
自分が見たいのは、壮大な世界観と不器用なキャラクター像なんだと思う。
不器用なキャラクター像というのは「文句あるか海賊王!」「クソお世話になりました!」「敵わなくたって守るんだ…」「ルフィ…助けて…」こういうとこ。
壮大な世界観は、映画の尺で再現するのは到底無理。不器用なキャラクター像は、できるはずなんだけど、これまで一度も刺さる作品はなかった。

そんなこんなで迎えた2017年。Netflixでの実写版製作決定。世間に反して自分の期待値は高まった。ネトフリオリジナルは正直打率は低いけど、製作者への敬意や挑戦的な姿勢は感じられるからだ。吉と出るか凶と出るかはわからないけど、少なくとも今までのカネの臭いがする実写作品(ドラゴンボ…セイントセ…ゴホンゴホン)とは違うものができるのではないかと思った。

そして2023年8月31日。答え合わせのときーー

Qストーリーは原作に忠実か?
A忠実。端折ったシーンは多く、追加したシーンもある。ただ、追加シーンも原作のどこかで聞いたようなエピソードばかりなので(扉絵やSBS)、ストレスがなかった。モーニン、ボガード、リカ…知る人ぞ知るキャラの名前がそのままだったのは嬉しかった。

Q作品に対する愛を感じるか?
Aひしひしと感じた。セットや小物に対するこだわりには涙が出そうだった。スタッフが100巻もある原作を検索しながら、ここはこういう装飾じゃないか?とか相談しながらやってるのかなとか想像するだけでも楽しめる。

さらに言うなら、私達はワンピースを愛してますという発信がうまかった。直前のプロモーションでは、イニャキが興奮した様子で集英社や原作者を訪問する映像が配信された。あんなにJapanese Animeがハリウッドからリスペクトされてるところを表現したプロモーション映像があっただろうか?
『君の名は。』『鬼滅の刃』の2段ブーストにより、ようやく「アニヲタ=幼稚or変態」から脱しつつある世界。関心はあるけどまだ手が出せてなかったという人にとっては、Netflixのお墨付きだし実写なら…とアニメに手を出す絶好のチャンスになるはず。

Qカネの臭いを感じるか?
AYESでもありNOでもある。Netflixには、儲けるために面白さを捨てる、ではなく、面白くすれば儲かる、という感覚がある気がする。圧倒的に面白ければカネにがめつくたっていい。今回は、絶対に妥協しないという思いがものすごく伝わってきた。

Q壮大な世界観を体現できてるか?
A体現できてる。コビーを使って良い海賊や悪い海軍が入り交じるこの世界観をうまく説明してたと思うし、何より映画では到底考えられない8時間の大ボリュームである。いや、ファンとしては、80時間でもよかったよ?でも8時間で製作費200億円…十分すぎます。

Q不器用なキャラクター像は描かれたか?
A少なくとも見たいものが見られたのは間違いない。「文句あるか海賊王!」「ルフィ…助けて」は完全再現されていた。ただもう一歩欲張っていいですか…?ウソップの戦闘シーンをカットしたのが残念。弱くて臆病なのに信念を持ってるからルフィはウソップを好きになったんだよなあ…カヤを守るために奔走したシーンが入ってたら、最後のキスも許せたけど。サンジもいい奴感はでてたけど、ゼフとのこじれた関係性の描写はもうちょっとほしかった。
他方、バラティエでのゾロとナミの会話シーンなど、オリジナルでよかった部分もあったのは嬉しい誤算。このへんよくわかってるなあ…泣

今後への期待。もちろんシーズン2が見たい。登場人物が増えてくるので脚本もキャスティングの維持も心配だけど、シーズン1でうまくいったこといかなかったことを踏まえて、この素晴らしい製作陣でアラバスタを作ってほしい。ウイスキーピークとリトルガーデンはとばして、双子岬・ドラム王国・アラバスタで1シーズンどうでしょうか。
アラバスタこそ、人を頼ることができないビビの不器用さを丁寧に書いてほしい。

84か国で1位スタート。報われたなあ…ファンからの評判より、「ルフィがゴム人間であること以外何も知らずに見たけど面白かった」というコメントが嬉しい。数年後の漫画版最終回までに、1人でも多く読者が増えるといいなと思う。
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