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イカゲームのdorarepのネタバレレビュー・内容・結末

イカゲーム(2021年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

日本で擦られまくってるデスゲーム系に飽きてきた一方で、他国はどうなんだろうと思って見始めた。
ダメな主人公が借金抱えて賞金かかったゲームに参加するっていう、日本の作品でいうと全体的にカイジっぽい流れ。
と、マクロで見たら既視感ある展開なのだが、正直体験としては全く異なるものが得られた。

デスゲーム系作品は異質さやゲームの駆け引きに面白さの焦点を合わせることが多いが、イカゲームではそれはあくまでエッセンスとして人間関係が物語の主軸にある。
そのため1話でもデスゲームに入るまで30分以上かかり、デスゲーム自体もわりとすぐ終わってしまう。
しかも2話ではゲスゲーム自体が一時停止して、登場人物たちの日常へと移る。
デスゲーム作品が3話になるまでまともにデスゲームしないってのは、つまらないとすぐ切られる現代においてものすごく強気な構成だと思う。

あわせてデスゲーム作品は「現実ではありえないこと」から恐怖を演出することが多く、必然的にリアリティが失われることが多い。
一方でイカゲームでは全てが「現実でもあり得るかも」という範囲に収めている。特にデスゲームの裏方の作業シーンが多く描かれ、綱引きの綱をセットしてるシーンや、死体を片付けるシーンなど、不必要なまでに丁寧に映像化している。
そこから今までのデスゲーム系にはない強いリアリティを感じた。
ただ恐怖は未知のものへの感情なので、リアリティはデスゲーム作品においてマイナスにも働きかねない。

なぜこのような描かれ方をしているかというと、刹那的な面白さではなくメッセージ性を重視しているからだと思う。
この作品はデスゲームを、現実世界の過酷さを引き立てる存在として描いている。
登場人物たちは仲間や家族との殺し合いを、自ら進んで行う。一度帰宅して日常に戻れたにも関わらず、多くの人が自分の意思でデスゲームに戻っていく。
主催者も参加しなくて良いにも関わらず、自分の意思で参加している。
つまり描きたいのが『デスゲームの世界はヤバい』ではなく『デスゲームよりヤバい現実ってどうなの?』なので、同じテーマにも関わらず類似作品と全く違う体験を得られた。
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