もりいゆうた

イカゲームのもりいゆうたのレビュー・感想・評価

イカゲーム(2021年製作のドラマ)
4.2
「なぜデスゲームは定期的に流行るのか?」を知りたくて、『今際の国のアリス』『イカゲーム』と続けて見て分析してみた。

デスゲームの走りは『バトル・ロワイアル』(2000年)で、それ以降、

バトル・ロワイアル
ライアーゲーム
カイジ
ガンツ
王様ゲーム
神さまの言うとおり
嘘喰い
今際の国のアリス
イカゲーム
(順不同)

などがある。

もともとデスゲームは好みではなくてあんまり見てこなかったから、意識してなかったんだけど、アリス、イカゲームと毎年話題作がこのジャンルから生まれているので、これはしっかり分析してみないとなと、すぐに見てみた。

まずデスゲームが好きじゃない理由は、「展開が同じで途中で飽きるから」なんだけど、流行ったデスゲーム調べてたら上で書いたものは全部見てて笑った。

好きじゃないとか言いながら、なんだ、俺、好きじゃんか。
(子どもの頃に見たライアーゲームわくわくしたなぁ)

これは流行る理由も自分の中にあるなと自己分析してたらある程度ちゃんと言語化できた。

今年『東京リベンジャーズ』が流行っていたけど、ヤンキー漫画くらい実は定期的に流行る。

飽きて作られなくなったと思ったら、また流行る。

なぜ流行るのか?

以下、考察。
(書く時間があまりとれないので簡潔に)


ーーーーーー

まず一つ目のポイントは、デスゲーム特有の「物語の構造」の話ですね。

デスゲームは"物語"になりやすいです。

なぜなら「極限状態を作りやすいから」です。

デスゲームにおける生きるか死ぬかというのは、人間にとって究極の葛藤です。

この「葛藤」というものが、脚本において最も大事なことの一つであり、これこそが感動的なストーリーを生みます。

物語を面白くするコツは、「主人公を徹底的に追い込む」で、葛藤のない物語は絶対に面白くなりません。


ちなみに、デスゲームもの以外に、この「葛藤を生む極限状態」を作り出しやすいジャンル(設定)が一つあります。


それは

「戦争映画」

です。


戦争というものは、いわずもがな究極の葛藤ですよね。

日本ではさすがに少なくなってきましたが、ハリウッドでいまだにたくさん戦争映画が作られるのは、戦争がまだまだ身近なことだからだけでなく、「ドラマになりやすいから」というのがあるのかもしれません。



ーーーーー

「なぜデスゲームは定期的に流行るのか?」ポイント2つ目は、

物語の始めに提示されることとなる、

「謎」

です。


作り手として作ったからには途中で離脱せずに、最後まで見てほしいですよね。


「いかに飽きさせずに最後まで見てもらえるか」


これが脚本において最重要課題なのですが、飽きさせないコツの一つが

「謎の提示」

です。


すごく雑にわかりやすく言うと「答えはCMのあとで」です。

CM来てもチャンネル変えられないですよね。


デスゲームにはこれがあるんです。

例えば、『今際の国のアリス』の一話目で、いきなり渋谷から人がいなくなって、えっなんで!?みんなどこいったん!?となりましたよね。そしていきなりゲームが始まり……

と、僕は思わず見入っていました。

こういったように、デスゲームは、最初にわかりやすい「大きな謎」がすぐに提示されます。

「いったい何が起こったのだろうか」
「これから何が起こってしまうのか」
「黒幕はいったい誰で、なぜこんなゲームを始めたのか」

これらの謎は、読者の「好奇心」を持続させてくれます。

この「好奇心」(謎)こそが、飽きさせずにハラハラドキドキしながら最後まで見てもらうために必要なことなのです。


僕自身、デスゲームものを、大好きなアクション映画やスリラー映画を見る感覚で見ていました。

求めるものが同じだったのです。

「ハラハラドキドキ」です。

好奇心を求めて、デスゲームを見ていたのでした。


デスゲームは完全な嘘。現実だとありえない。しかし、リアルではありえないからこそ、心を無にして現実世界ではできないことを主人公に投影して欲望をさらけ出し、むちゃくちゃにして破壊衝動やスリルを味わうことができる。

いわば、デスゲームは、THE虚構・ファンタジーを楽しむ装置みたいなものなのです。



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ここまでデスゲームの(良い)特徴である

「極限状態を作りやすい」
「謎の提示」

この2点書いてきましたが、細かく言うと他にもあるのですが、

せっかくなのでここからは、デスゲームという構造の「課題」を書かせていただきます。


まず一つ目は

「主要キャラクターが死ぬ」

です。


これはデスゲームという物語の構造上仕方のないことではあるのですが、せっかく感情移入するようになったキャラが普通に死にます。

主要キャラが死ぬとどうなっていくか、なぜだめかというと、

「物語がどんどん縮小していく」

からです。

その物語に広がりや深みがどんどん無くなっていくと言うこともできます。

もちろん新しいキャラを出すことはできますが、0からなので「好き」という感情が積み重なっていかないんですよね。
(せっかく感情移入していたのにアリスの友達二人が死んで僕は後半見る気が失せました)


本来、連載漫画の理想型は、続けていくうちに物語に深みが生まれ、世界観が広がり、愛すべきキャラクターがたくさん生まれることです。

例えば、『ハンターハンター』の主人公であるゴンは、(詳しい年数は忘れましたが)4年くらい出てない時期があるんですよね。

主人公なのに4年間も、ですよ。

普通だとありえないんですが、それでも裏返すと、それだけ主人公以外に人気のあるキャラクターがたくさん存在していて、一番人気であるはずの主人公を出さなくても回る、というのは物語としてはめちゃくちゃ深みがあるということなんですよね。
(ちなみに『ワンピース』ではサンジが2年間出てきません)

魅力的なキャラクターが増えるにつれ、物語の世界観も広がっていくのがセオリーにも関わらず、デスゲームは主要キャラクターが死んでいなくなるので、どうしても物語の世界は縮小していくことになってしまうのです。

これがデスゲームの課題だと思いました。



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そして、課題の2つ目は、

「一話目の期待感をなかなか超えられない」

です。


ちょっとここで思い出してもらいたいのですが、


バトル・ロワイアル
ライアーゲーム
カイジ
ガンツ
王様ゲーム
神さまの言うとおり
嘘喰い
今際の国のアリス
イカゲーム


これらのデスゲームの中で、ラストってどうなったのか覚えてる人っていますか?

僕、ほとんど思い出せないんです。

おそらくすごく綺麗な形で終わっていれば、覚えていたと思うんですよね。

でも、(もちろん覚えている人もたくさんいると思いますが)どの作品もインパクトはすごくあったので、記憶にはこびりついているのですが、僕はどれもラストが思い出せない。

綺麗に終わってるのをほとんど見たことがない。

つまり、これからいったい何が起こってしまうのか、といった序盤のハラハラ感がピークで、少しずつ尻すぼみになってしまいがちなのが、デスゲームという構造上の課題です。

(イカゲームはそうでもないですが)個人的にアリスは一話目が一番面白かったです。ここがピークでした。

「一話目の期待感をなかなか超えられない」のです。



主要人物だと思われた仲間が死んでいっても、展開を広げていき、そして最後はあっと言わせるラスト。

逆に言うと、これさえできれば、いずれまたデスゲームの傑作が生まれるのではないでしょうか。



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ということで、まとめると、

デスゲームの流行る理由
「極限状態を作りやすい」
「謎の提示による好奇心の持続」

デスゲームの課題
「主要キャラクターが死ぬことで、物語が縮小していく」
「一話目の期待感をなかなか超えられない」

です。


全然関係ないですが、Netflixでやる予定の『幽遊白書』のドラマとても楽しみです!!