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イカゲームのfmのネタバレレビュー・内容・結末

イカゲーム(2021年製作のドラマ)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

『カイジ』『バトルロワイヤル』『Saw』辺りのネタを組み合わせて実写ドラマ化した作品。
こうしたデスゲームものはそもそも日本のお家芸なのだが、いかんせん映像作品として仕上げる能力に乏しいため、邦ドラマではイカゲームほどの完成度は出せないだろう(日本版CUBEもあんなだし…)。
暴力、銃、格闘、貧困、潜入捜査、国際問題、この辺が盛り込まれているため、子供がやるゲームとはいえ厚みが出ている。
あの異様にカラフルでシンメトリックな階段を上るシーン、「Fly me to the Moon」が流れるなかでの処刑シーン(対位法)など、映像的な快楽がある。

福本伸行作品であれば、主人公が窮地に追いつめられてから圧倒的なひらめきを見せて勝利するのだが、イカゲームはルールがシンプルで強すぎるため、それほど捻った攻略はなされない。
たまたま汗が落ちたとか、たまたまガラスに詳しい人間がいたとか、たまたまライバルが脱落したとか、たまたま主催者側のトップと組んでいたとか、そういうのである。
ソウル大のエリートは一応戦略的ではあるのだが、やはりルールが強すぎるためか、それなりのアイデアにとどまってしまう。
いわゆる「超人」を出さないからこそ現実的とも言える。

主人公の存在意義はある種の面倒見の良さにあるのだが、彼が保護しようとしていた老人や脱北した女性が脱落してしまうため(そのうえ敵対するヤクザチームも主人公とさほど関係ないまま消滅する)、最終話付近では存在意義が薄くなってしまう。

「金があってもなくても似たようなもの」という結論は金を持っている側の欺瞞的発言だと思うし、さっさと金使って娘を迎えに行くとか、他者の遺族に渡すとかすればいいのにな。

というわけでしりすぼみになってしまうのは残念だが、容赦ない発砲シーンなど観てるだけで楽しめるし、キャラクターの描き分けも見事であるから、デスゲームの実写化を観たければこれは有力な候補だと思う。
最後まで観てもイカゲーム自体のルールがよくわかんなかったのはご愛敬。
結局ただの殴り合いだったもんな。
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