英国の貴族階級に生まれながらも幼少期の体験が原因で愛される事ばかり求め続け、子供のまま大人になってしまった破滅的な主人公。過去に怯え、ドラッグと酒に溺れ、挫折を繰り返しながらそれでもまっとうに生きることを願い続ける男のトラウマと更生までの道のりを鮮烈に描いた作品です。
どのシーンで止めても色彩や画面構成が完璧に美しい作品というのは映画でもなかなか巡り会えないのですが、これがドラマだというのだからイギリスどうなってんだと思いました。しかも内容も抜群に面白い。本当に素晴らしいです。
劇中に使われる音楽すらかっこよくて、OP.EDクレジットまでめちゃくちゃおしゃれ。
そしてベネディクト・カンバーバッチの圧巻の演技に改めて圧倒されました。もう凄まじいです。
本来愛を受けるべき時代に心身を引き裂かれ、それでも不器用ながら情を持って家族に接しようとするパトリックの姿には心が傷みます。
不安定で脆く、誘惑に弱く、寂しさに敗北し、それでもまっとうでありたくて、自分を捉える泥濘から脱しようともがく様は危なっかしくてハラハラさせられ、そして時にがっかりさせられます。一見支離滅裂にみえる言動でも本人はその都度真剣で、どこか憎めないその不器用な姿を見ていると不思議と愛おしく思えてくるのです。
1話ラストの「薬を辞めて何をしたいの?」と問われたときの迷子の様な泣き顔を見て、彼の行く末を見届けたいと強く思いました。全編通しても特に大好きなシーンです。