胃潰瘍のサンタ

17才の帝国の胃潰瘍のサンタのレビュー・感想・評価

17才の帝国(2022年製作のドラマ)
3.4
素晴らしいタイトル、コンセプト。オープニングに代表される音楽と透明感ある映像の色彩設計は本当に素晴らしい。
意気込みは買いたいのだが、全体的には惜しいドラマになってしまった。

まず第一に、主人公扱いである真木亜蘭にそこまでの魅力を感じない。ドラスティックな決断を下す存在でありながら、やったことと言えば議会の廃止に開発計画のちゃぶ台返し、公務員の首切りだけ。年齢を抜きにしても特に優秀とは言えないし、中途半端な「良い人」。
失業率10%の崖っぷちにある国家の実験都市のトップにしては随分呑気だ。公務員の転職で幸福度があんなすぐ上がるのも設定と合わない。
いっそ、「無能は死んで良い」ぐらいの思想を持っていればもっと面白かったかもしれないのに。

第二に、AIの類が本当にデウス・エクス・マキナにしかならなかった点。これでは思想の問題から逃げたと思われても仕方ない。真木の秘密ってそもそもそんなに重要なんだろうか? むしろデジタルネイティブがAIをどう使うかという点に、この作品のポテンシャルがあったんじゃなかろうか?

三点目に、致命的な問題として、主人公のサチや真木、脇を固める平、鷲田総理の考えやスタンスが全く薄っぺらく、サチに至っては何故あんな行動に出るのかよく分からない、というか、他に何の役にも立ってない。
「17才」という視聴者の誰もが通ったはずのあの日々を、こんな便利な共感の道具に使って良いんだろうか?
ラストは余計に、彼の年齢ゆえの純粋さが上手く表現できていると思えず、何だかはぐらかされたような印象で終わってしまった。他にも色んなキャラがそれぞれの思惑で動いていたはずなのに、うやむやに。
ラストで伝統のお祭りをやれば色々な禍根が解決するというのも、「何となく」の雰囲気だけで終わってしまったように見える。

最初にワクワク感があっただけに、中盤から残念な展開になった。このオチをやるにしても、もうあと1、2話欲しかったし、願わくば1クールほどやって更に混沌とした展開にしてほしかったなと思う。