このレビューはネタバレを含みます
あらためて言うまでもないことだが、彼女が突発的なトラブルに巻き込まれ、飛行機事故のため森の中にひとり取り残されてしまったということがこのドラマのストーリーなのではない。
したがって彼女がサバイバル術に長けていなくて、やってはいけない間違いばかり犯しているとシナリオの現実的な知識不足を指摘してもこのドラマの評価にはなんら影響は及ぼさないだろう。
彼女が道を見失ったのは、親子の関係の中でのことであり、恋人との関係の中でのことなのだから。
そしてその原因を作ったのは彼女だけではない、いやむしろ逃れられない人間の出自の問題であるかもしれない。
彼女は妊娠しているが、それは自らの生まれ変わりの追体験であり、再生のシンボルなのである。ドラマ終盤、彼女が岩場の切れ目より出てくるシーンは誕生の、そして再生の隠喩である。
未来の幻想のように映し出される出産のシーンは、新しく生まれてくる赤ん坊という彼女自身の姿なのである。
川から救い出された彼女が最初呼吸していなくて、その後しばらくして呼吸を始めることに、生まれたての赤ん坊も明らかに呼応している。