かささた

寄生獣 -ザ・グレイ-のかささたのレビュー・感想・評価

寄生獣 -ザ・グレイ-(2022年製作のドラマ)
4.1
あの名作漫画寄生獣をあのヨン・サンホ監督が映像化する、というだけでテンション爆上がりですが、凄い面白かったです。1話50分ほど全6話ですが一息に全部観てしまいました。岩明均の原作の映像化では最も優れた作品になったのじゃないでしょうか。
ネタバレにならないと思うので言ってしまいますが、このドラマは原作の映像化でも続編でもスピンオフでもなくて、「原作で起こった出来事が韓国でも起こった」という設定だけを借りた全く新しい作品です。なので原作にあるテーマ、産業革命以降の人間の生活の在りよう、環境破壊への批判、人間に似ていながら人間を捕食する「他者」への恐怖と理解、そうしたものだけは残しながらも重複して語ることはせず、孤独や他人を信頼することなど、ヨン・サンホ監督独自のテーマが盛り込まれています。しかし僕がこのドラマで最も面白いと思ったのは何人かの主要人物のキャラクターでした。癖が強くて現れた時にはとっつきにくいのですが、その人だけの良いところがだんだんと見えてきて、要するに人間くさいのですが最後にはみんな好きになってしまいます。
寄生生物に関する設定は少しアレンジが加えてありますが、さほど違和感はありません。あとアクションが凄かったですね。原作でも寄生生物のアクションは後藤を除けば首から上だけのアクションで、寄生された身体の方はぬぼーと立っているだけのことが多かったのですが、このドラマでは寄生生物部分の機動性を生かすように全身がぐるんぐるん良く動きます。
ヨン・サンホ監督は元々原作の愛読者だったらしくいたるところで原作に敬意を払いながらも、自分なりの全く新しい寄生獣を作ることに成功したのじゃないでしょうか。原作の○○化の可能性を見た気がします。
ところでヨン・サンホ監督といえば「新感染ファイナル・エクスプレス」というゾンビ映画で有名なのですが、ゾンビの後に寄生獣を作る、という流れはとても順当なもののように思えました。ゲーム「バイオ・ハザード」では4作目から敵性対象がゾンビでなく「プラーガ」という寄生生物による怪物に交代するのですが、このプラーガ(が寄生した人間)、設定もビジュアルも著作権を心配するほど「寄生獣」の寄生生物そっくりなんですよ。ゾンビの上位互換としての寄生生物という流れを感じました。
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