この作品の原作となる岩明均のSF漫画「寄生獣」は過去に日本で実写映画化やアニメ化がされてきたが、個人的には原作にあった魅力を再現できていたとは思えず、韓国で製作されたこちらのNETFLIXドラマ版はどんな物語になるのだろうと期待して観賞した。
世界観の設定や物語が転がりだす冒頭は原作に忠実でありながら、その直後から良い意味で原作と全く違う展開になっていき、その展開速度はスマートで、演出もダイナミックで、しかも中だるみすることがほとんどなく全6話を駆け抜けるような組み立てになっており、かなり高品質な作品だと感じた。
世界的規模の人類存亡の危機的な状況が発生している物語設定ながら、作品で描かれる範囲はあくまでも韓国の国内にとどめ、しかも首都や都会ではなくこじんまりとした田舎で完結する脚本になっていつつも、安っぽかったりスケールが小さいと感じない見せ方になっているところが素晴らしい。
主要な登場人物達の個性はいずれもしっかり確立されており、また俳優達の演技レベルも高く、それぞれの俳優が物語における自分の役割をしっかり担っている。
特殊部隊のチーム長を演じるイ・ジョンヒョンが最初に登場したシーンでの演技がやや漫画的というか書き割り的で (漫画原作だからある意味間違ってはいないのだけれど…) このオーバーアクトがずっと続くようだと少し冷めてしまいそうだなぁと不安になったが、徐々に葛藤を抱えたキャラクターであることが見えてきて、その複雑さが演技で表現されていて懸念が解消された。
原作をなぞる形には全くなっていないながらも、原作に対する本質的な深い理解とリスペクトが随所に感じられ、観賞後には間違いなくこれは「寄生獣」の物語だったという読後感が残る、とても不思議でとても面白い作品だった。
こういった形の大胆で換骨奪胎的な脚色技巧は、世界的にもなかなか見られないものではないかと感じる。
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