Uえい

イルマ・ヴェップのUえいのレビュー・感想・評価

イルマ・ヴェップ(2022年製作のドラマ)
5.0
めちゃくちゃ良かったけど、なぜ良かったのか自分でもわからない。万人におすすめできる作品では無いが、何故か刺さる部分があった。

まず描いている内容が入れ子になっているのが特徴だ。フイヤード監督の「レ・ヴァンピール」をドラマとしてリメイクようとする撮影現場を描いたドラマだ。アサイヤス監督は以前にも同内容の「イルマ・ヴェップ」という映画を作っているため、そのリメイクとも言える。

そして、登場人物、主に監督のルネと、イルマ・ヴェップを演じる主演のミラが主軸になり話が進んでいく。ルネ監督はリメイク元にも登場し、今作の中でも再リメイクをしている設定だ。さらに、リメイク元の主演と結婚・破局をした事を引きずっており、アサイヤス監督とマギー・チャンの関係を連想せざるを得ない。

主演のミラは元恋人に裏切られてすぐアメリカからパリにやってきたため、過去に囚われている。ミラはイルマ・ヴェップを描くためにのめり込んでいく、リメイク元と同じくコスチュームを身に纏うとイルマ・ヴェップが憑依し、パリの夜を駆け回る。そしてイルマ・ヴェップを演じてきたミュジドラ、マギー・チャンと交流をする。

ドラマに関わるのは主にルネ監督だが、癇癪によって失踪してしまう。その間、ハリウッド監督ハーマン、ミラの付き人で新人監督のレジーナが撮影する。リメイク元でもハリウッド的な監督は出てくるが、レジーナは初めて登場する。レジーナはドゥルーズを読むようなシネフィルでケネス・アンガーを手掛かりに撮影する。これが今作の鍵になっているのかもしれない。

ケネス・アンガーは悪魔的儀式を形式ではなく内容を詩的に映像にした。こういった映像での降霊的なアプローチで、映画史に潜む幽霊としてのイルマ・ヴェップが見事に顕現していて感動した。
Uえい

Uえい