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グレースの履歴のmasatのレビュー・感想・評価

グレースの履歴(2023年製作のドラマ)
3.1
気取りが堪らない源孝志の真骨頂。
原作まで描いて、自ら脚本化し、10年の時を経て演出。
久しぶりに味わう源孝志・・・初めて出会った時のあの頃の、あのワクワクを思い出した。
変わらないなあ。

2話目までは、イイ具合にスカしてて、さすが源孝志と思うのだが、
3話目からNHKドラマドラマしてきて、張り詰めていたクールさが溶けてしまう。
同時に、
はっきり言ってあまり好きではない主人公二人の男女俳優も、源マジックでなかなかに見えていたのだが、普通のTV俳優に・・・
5話目から、また軌道に戻り、ストイックにスカした感じになってきた。滝藤も、初期設定の演技に。
柄本佑の複雑な感じが巧い。
柄本と小野の出会う瞬間の切り返しが昂奮。
林遣都も、グッと支えて良い。
7話、いよいよラスボス。
前半の防波堤の写真の発見で、力尽きたか、ラスボス登場後の展開や画に冴えがない。
最終回
広末涼子の力量は遺憾無く発揮。
時系列で言うと、宇崎竜童が訪ねて来る。
グレースを調整する、そして手で大切に洗う。それをもう一人、とても愛おしい様に洗う女。まるで遠回りして手に入れた目の前の真っ赤な人生を今度こそ大切にする、そんな儚くも強く思う瞳。ある予兆が香る名シーン。それを見て微笑むようなそうでないような宇崎。ここが良い。

クライマックスは、もう寂しくないであろう男の現在。そして、ラストステージへと向かうのか否か?どうやらまた遠回り。まずは肉親へと向かうらしい。

こんな都合の良い話、そしてこんな都合の良い女(たち)なんて、この世に存在せん!
が、あの空気には、かつて触れたことのあるような・・・男は必ず振り向いてしまう、失われた時を求めて。幾つになっても過去に執着する女々しさよ。
そんな男の感情が、もしかしたら、未来を照らす、のか?なんて言う、キザでスカした源孝志節の究極。この源特有の哀感が、男は堪らない時があるんだなあ。
ラストカット、あの時、あのスタートの時、あの紅い車を見送った滝藤のラストカットが素晴らしい
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