JONEY

エンジェルフライト 国際霊柩送還士のJONEYのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

海外で亡くなった人の遺体を帰りを待つ家族の元に搬送する国際霊柩送還、その会社を経営し自らも現地に赴き家族への対応やエンバーミングなどの作業もこなす社長である伊沢那美と、新入社員の高木凛子を中心に、亡くなった方の思い、帰りを待つ家族の思いを描きながら、メイン二人の家族との関係も一緒に描いていくドラマ。

元になった原作本がある事、登場人物の設定なんかも全然違うっぽいという事は、ドラマを見終わった後に知ったので割愛。

事件に巻き込まれた、不慮の事故に遭った、病気の発作、自ら命を断ったなど、さまざまな要因で突然亡くなった方、それを待つご遺族、ご遺体を運搬するにあたってのトラブル。

『死』を扱う題材は漫画などではまま見るけど、ドラマではあまり見ないので、これだけでも興味深かった。


常に自信満々な雰囲気で他人には無礼ギリギリの態度で接してくるが仕事をさせると真摯で敏腕、そして私生活においてはちょっと影を背負ったところもあるという、いかにも「米倉涼子が演じそう~~~~!!!!!」な女社長。
関係を上手く構築できなかった母親への反抗としてこの葬儀社へ転職し、仕事や同僚先輩に対してマイナス感情を抱いているも徐々にその仕事の重要さに目覚めていく新人。
守銭奴ムーヴをして社員を振り回す一面もあるけれど仕事へのプライドはあり、皆の良き理解者になる会長。
ズケズケとした物言い、事務員というには少々派手な装いをしているも有能な女子社員。
エトセトラエトセトラ。
あまりにも使い古されたテンプレなキャラクターたちに「その味は食べ飽きたよぉ」になってしまったのは確かだし、「米倉涼子氏は一生こんな印象の役しか回って来んのか…?」とも思ってしまったんだけれど、最終回になる頃には「このまま個々の背景語らずに終わるとか言わないですよね!?」と思うくらいには登場人物それぞれに愛着が出てくる、良いドラマだった。

続編が作られそうなヒキをしていたので、ぜひ制作してほしいと思うし、S2があるなら今度は個々の社員がメインになるお話も一つヨロシク…。



…が、最終話だけはなんだか白けてしまった。
凛子と母親の関係について序盤からギクシャクしている、母親は手術が必要なほどの疾患を抱えているとの種まきはされていたものの、子供側から見た「親から愛されていない」「それには自分が”母が誇れない子”だから」というところだけでなく、母側からの「子供を愛せない」「子を愛せない親はいないという周囲からの圧」「キャリアを失った事への苦悩」「周囲への見栄」の苦悩を最後にワッと盛り込んできて、亡くなった後に「実は上司同僚が事前に母親に会っていて色々ヒアリングしてました、実はこうです!」「お母さんも苦しんでたんだ…うおーんおかあさーん」されても、積み重ねがないので全然ピンと来ないというか、急にいい話にして救済してきたなという白々しさだけを感じてしまった。

メタ的に考えたら、この手のドラマで修復不可能なほどの『親子の断絶』はないだろうと思っていたけれど、『相互不理解』のまま、それでもなんらかの手段でスッキリと心の整理をして、母親を看取って見送っておしまい!凛子は母の呪縛から解かれ、自分の居場所を確立し、誇りを持てる仕事に出会い、大団円!でよかったのにな…と思ってしまった。
わたしは『愛を乞う人間』の話が大好きなので、母から愛されたいと願っているのに上手くいかずその鬱屈した気持ちを抱えてきた凛子に注目していたし、彼女の気持ちが爆発するところではさぞ共感して泣いてしまうだろうと思っていたのに、非常にがっかり。

ついでに言うと、凛子の母親が『死ぬまでにやりたいこと』として会いに行った友人である海外在住の男性医師に対し、那美が「彼女に好意を寄せられていたよね。彼女もそれを望んでいたはずだが、抱いたのか!?」「抱かなかった!?なぜだ!」などとヤイヤイ言い募り、結果、彼は「内緒にしている訳でもないが、彼女には伝えそびれていた」的な事を言いながら、自身がゲイである事をカミングアウトする羽目になってしまった流れも「ハー??」になってしまって、評価をガクンと下げる一因になった。
凛子の母の遺体を迎えにきた、という仕事に関係があるとはいえ、個人の家族がいる画面かつ初対面の人間相手に好きだ嫌いだ抱くの抱かれるのとズケズケ聞いてくると言うのは、那美のキャラクター性からしたらわからんではないけど、いくらなんでもデリカシー皆無じゃないの………?になって、見ていてすごいキツかったな。

原作の方がわからないんだけど、原作もこういうテンションなのかしら……
JONEY

JONEY