うりた

ダーマーのうりたのレビュー・感想・評価

ダーマー(2022年製作のドラマ)
4.2
被害者がいる以上エンターテイメントとして消費してしまうことには罪悪感があるが、こういう凄惨な事件があったことを知れて、さらに色々な側面から考えることができたことを思うと、私はこの作品に出会えてよかった。
大好きなエヴァン・ピーターズの素晴らしい演技を観ることができたという点でも。

全編に重苦しい空気が流れ、特に前半の緊張感はすさまじい。ライアン・マーフィーのアメリカン・ホラー・ストーリーは全シーズン観ているほど大好きなのだが、あれとはまた違うリアルな恐怖がそこにあった。
殺人描写はキツいものがあり人によっては脱落してしまう人もいるかもしれない。私もご飯を食べながら見始めたことを後悔した。

ダーマーのしたことは到底許されることではないが、彼の抱える孤独や苦悩は一人で抱えるにはあまりにも重すぎたと思う。
凶暴で怒りに満ちた殺人鬼であれば、きっと同居する祖母など揉めた時点ですぐに殺しているだろう。でも、彼は殺さない。そこにダーマーが他の殺人鬼とは違う特殊な精神構造であることを感じる。
父親にも愛が1ミリもなかったわけではなく(私は母の方が無理)、もちろん家庭を顧みないのは決していい父親とは言えないが、彼らにとっての「父と息子のキャッチボール」が解剖なら責めるのは結果論なのではという気もする。
物事は複雑に絡み合って一つの結果を為すもので、何をどうしたらこんなことが起きずに済んだのだろうかと観終えたあともしばらく考えてしまった。
言うまでも無いが人種差別はクソ。殺人を見過ごしたあいつらは許さない。
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