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三体のmorettiのレビュー・感想・評価

三体(2023年製作のドラマ)
4.0
原作は超ハードそうなので立ち読み1分で撤退、そのあと映像化されたテンセント版のドラマを観て「めっちゃ面白そう…」と思ったんですけど、5話まで観てもまだ「めっちゃ面白そう…」のまま、要は深長壮大な展開のハードSFでなかなかオハナシがつかめないし進まないし、これが全部で30話あるという先の長さにクラクラして頓挫。
 
そして、一番入りやすそうなNETFLIX版(全8話!)でやっと、やっと「三体」というフィクションを飲み込みましたぁぁぁ!短小バンザイ!
 
鑑賞後、まずはあらためて「原作読むぞ!」と意気込んでおります。文庫版出たし。
 
いきなり外側の話ですが、こういう未知のフィクションの映像作品を観るときに、その登場人物に扮する俳優さんがあんまり知らない人だとより作品世界に没入できていいよね、と改めて思いました。豪華キャストの魅力もあるけど、見慣れない俳優さんが魅力的だとなんか嬉しいし、好きになっちゃいます。ベネディクト・ウォンさんやエイザ・ゴンザレスさんは知っていたけれどもそれぞれに今まで観たことのないようなキャラクターで興味を引っ張ってくれました。
ウォンさんは一番素敵なウォンさんでした。
あとほぼ主演のジェス・ホンさんがめっちゃいいし、謎めいた狂信者のマルロ・ケリーさんも魅力的でした。
 
いざそのハードルを跳んでみれば、異星人襲来モノ+接近遭遇モノの王道。
それでもやはりハードSFなんですけど、端緒だけ触れたテンセント版よりすごく入りやすかったですね。
けっこうぶっ飛んでるし、ハイテクノロジーが当たり前すぎたりしていて「えッ」ということも多々あるんですけど、そこはなにやら超頭のいい人や高次元の宇宙人がなんかやってる、という理解のはるか上の説得力があるので咀嚼せずに飲み込めます。

そういうオーバースペックなSFとしての面白さもありつつ、人間のドラマがけっこうぎゅっと詰まっていて、特に主人公たちの、(おそらく本作の大きな脚色であろう部分の)オックスフォード同期5人のドラマが友情や愛情ベースになっていたりもするので「あすなろ白書」気分で楽しめるというか。
7話で描かれた、とある人物の顛末と葛藤にはちょっと泣いちゃいました…演出も上品で華美にしないのがよかったね。
 
それに加えて人類の歴史に対する憎しみとかテクノロジーへの依存とか宗教とか、そういう普遍のモチーフもこのハードSFには練りこまれていて、とても感情的な示唆に富んだドラマになっていましたよ。
文化大革命からはじまる物語なんですけど、その文革において使われるワードがまた別の方向から投げられるとき、この「三体」というフィクションが壮大な暗喩として立ち上がったりもします。
 
そうそう、中盤で描かれたとある組織への「雑すぎじゃね?」という作戦のシークエンスでは「CUBE」っぽい容赦なさがじわりじわりと描かれていて、そこは素直にテンションあがりました。残酷ぅ~。
 
原作からのアダプテーションの大きなところはたぶん、中国国内の話をロンドンに変更していること。
それに合わせてアジア系の人も含め、多種多様な人種構成のキャラクターになっていて、そこに移民として背負っている各キャラクターの歴史や葛藤がスパイスとして随所で効いていましたね。
あと当然だいぶストーリー構成も変えているっぽい。
 
想像通りクリフハンガーというか、「戦いはこれからだ」的なジャンプマンガの打ち切り風にシーズン1は終わってましたけど、シーズン2に続くそうです。
 
描かれる空間や時間がスケールがでかくて、なかなか肌感覚で捉えづらいかもですけど、そこは脚色されたこのネットフリックス版のフレンドリーさがかなり功を奏していて、「三体」入門としてすごく良い気がします。
本屋さんに行って「三体」原作を改めて手に取ったけど、やっぱりちょっと読んだだけでくらくらして…いつ読めるのか、はなはだ疑問であります。がんばるぞ。
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