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寄生獣 -ザ・グレイ-のmorettiのレビュー・感想・評価

寄生獣 -ザ・グレイ-(2022年製作のドラマ)
4.0
わたしにとって漫画「寄生獣」は、歴代ベスト10の上位に食い込む名作であります。
主題やアイデアや作画などすべてのうえでハイレベルでありつつも通俗的な娯楽マンガで、今読んでも最初から最後までめちゃくちゃ面白いし、最終的には「ミギー…」と涙目になったりもします。
最初の「ぱふぁ」2コマの衝撃は永遠です。
 
その後の映画化された前後編は観ましたけど(前編はそこそこよかった記憶だけどミギーの声はなぜ阿部サダヲだったのだろう)、原作厨なので「物足りん!」というところで、今回のネトフリ韓国版は鬼才ヨン・サンホ監督ということでそれなりに興味はあったけども原作の映像化ではないっぽいので「ふーん、そのうち観よ」という感じでした。
しかし!あらかじめ喰らったネタバレに逆に興味びんびん。マジで?
 
んで焦って観ました。
1話40~50分くらいで全6話。さくっと観れましたね。
 
現在の韓国を舞台にした物語で、原作マンガから大幅にアレンジやローカライズがされていました。
ヨン・サンホ流に換骨奪胎してましたけど、オリジナルの要素やテーマも引き継いでいて、原作厨のわたしも大いに満足でした。
シンプルに面白かったですよ。
 
ただ、全6話という尺の中では仕方なかったかなとは思いますが、語り口的にも物語的にもちょっと性急で、パラサイトがじわじわと人間社会に蔓延していく面白さがなかったかなー。
脳を奪われてから暴れるまで早すぎだぜ。しかしそこは「新感染」の人なので、時間のかかる大状況はテキパキと説明済ませてキャラクタードラマと追走劇アクションの両輪で魅せてくれるので、それはそれで飲み込みやすさもありましたかね。

原作の描写や要素やキャラクターを適宜再提示して原作厨のツボを押してくれるので適度に心地よく、その一方でメインのキャラクターたちの設定や行動原理がヨン・サンホならではのオリジナルで、とくにチョン・ソニさんやク・ギョファンさんは韓国の下層社会構成員で、ゆえの欠落や非力を抱えておりそれをガソリンとしてドラマを燃焼させていく終盤はおおいにアガりましたね。

チャン・ソニさん演じるスインの幸薄い感じも良かったし、叔父さんがあんなことになって…そこは原作の新一のお母さんのことを思い出したりしましたけどね結局。
(いちいち原作の良さが思い出されて困る、というのはある)

原作のミギーに相当する〝ハイジ〟の設定もこれはこれでよかったし、その現出と対話の表現も理にかなっていたと思います。
チャン・ソニさんの二面演技も素晴らしかったね。カラコン入れてるのかもだけど、眼が無機質になって人心ではない何かが喋っている感じ。
まやっぱり、ミギーの設定活かした戦闘力高めの〝騎馬戦〟もよかったのですけど。

あとク・ギョファンさん演じるガンウは原作に近しいキャラもいない新鮮なキャラクター(強いて言えば近いのは倉森かな)で面白かったなぁ。
人生逃げまくりのダメキャラで、でもパラサイトを介してスインに出会い、困難に真正面から立ち向かう人間に変わっていくのはど定番ですけど、よかったですわ。ちょっとDJ松永に似ているク・ギョファンさんの三枚目の小市民感が出色でしたよ。よくみるとイケメンです。

で、最終決戦の後のエピローグに出てきたのが菅田将暉の泉新一!
なんかアイアンマン の時のニック・フューリーみたいな感じの登場で、あの泉新一は原作の新一のその後の姿なのか、それとも別の世界線の泉新一なのかわかりませんけど、わたしの知っている世界観に接続してくれたら嬉しいですね。
ていうか、原作の続編的なことはやってくれるなと思ってますが。

ま、こうるせぇ原作ファンを手懐ける(または黙らせる)ためのサービスのような気もします。
とりあえず黙っておきます、微笑みを携えて。
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