地底獣国

三体の地底獣国のレビュー・感想・評価

三体(2023年製作のドラマ)
3.9
先に本作のことをガンダム劇場版一作目に例えたが実はもうちょっと複雑で、原作三部作の主人公たちがオックスフォードの同窓生で、楊冬の教え子という設定になり、役割も若干変えられている。適切な喩えは思いつかんのだが無理から言うと、始まって30分ぐらいでシャリア・ブルやララァが出てきてニュータイプ話が始まったりギレン総帥の出番が増えてたりといった感じか。

原作やテンセント版での汪淼と大史のブロマンス要素にハマった人からすれば本作でオックスフォードファイブが繰り広げるソープドラマを見せられて「何してくれんねん😡」となるのは無理なからぬところではあるがしかし。

先行作品から10年、15年開いてるならいざ知らず、これだけ短いスパンで製作するんであれば同じ事やってもしょうがないんだし、登場人物の整理統合やシャッフルは相当上手くやれてるんじゃないだろうか。

古筝作戦の指揮を取るのがスタントン大佐でも常偉思少将でもなく、皆んなが大史の次ぐらいに好きなトマス(キレッキレ)・ウェイドなればこそ第5話はあれだけのインパクトを出せたわけだし、テンセント版では描くことが出来なかった第1話冒頭の文化大革命での糾弾集会と、そこで父を死に至らしめた紅衛兵に後年再会する場面を入れる事でその間の部分をサクサク進めても葉文潔の絶望を十分伝えることが出来たのは国外製作の強みと言えるんじゃないか。

とはいえ端折り過ぎな部分も結構あって、作品世界観を印象付ける「射手と農場主」の話とか、三体ゲーム内に人列コンピュータのステージがあった意味とか、楊冬が命を絶った理由を葉文潔が知るくだりなんかは残しておいた方が良かったんと違うか?「黒暗森林」「死神永世」の序盤も入れるのであればやはりあと2、3話は欲しかった。総じてテンセント版は馬鹿丁寧にやり過ぎ、本作は飛ばし過ぎの印象。

ともあれ(そのような意図があるのかどうか分からんが)「三体」入門編としては実に上手くチューニングされていた訳だし、第8話はかなり大きくアレンジされてたんでこの後どうなるのか気になってしまう。アインシュタインのジョークからどうやって黒暗森林理論に行き着くのか?申玉菲と潘寒と爆弾少女を掛け合わせたようなキャラのタチアナがどう動くのか?ソフォンの低次元展開を割とざっくりした描写で済ませてたけど、「死神永世」の紙片をどう映像化するのか?それとも全く異なるストーリーにしてしまうのか?

いや、そもそもシーズン2以降を作れるのかどうかもまだ分からんし、今から気を揉んでいても仕方ないんだが。
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