タミキーリ

警部ダリオ・マルテーゼ 遺志を継ぐ男のタミキーリのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

イタリアのシチリアにある都市トラパニを舞台に、
親友を殺された警部が事件解決の捜査を進めるうちに20年前の父の汚名と自殺にもたどり着くという物語。
70年代半ばの時代設定で、衣装も車もインテリアもクラシック、携帯電話のない不便さがそこかしこに。

70年代半ばのシチリアなので、背後にマフィアの存在。
関係者、詳細を知っている者が次々と姿を消すシビアな展開。
とはいえ、米英産にはない描写がふんだんにあり、
それらに慣れた基準で見ているといくつかミスリードもしくはいらぬ心配となる面白さ。

オープニング映像がスタイリッシュな絵で美しいのだけれど、
これ全部本編からのものだと半分観たあたりで気がつく。
人物が映らない部分の映像がめちゃくちゃきれいなのよ…。
主演はキム・ロッシ・スチュアート。歳を重ねても素敵で、良い役者です。

監督はジャンルカ・マリア・タヴァレッリ。
「ジョルダーニ家の人々」の監督だった。そりゃ面白いはずだわ。

<ここからネタバレ>

設定として、別れた妻との間の娘とのエピソードがあって、
それがアメリカやイギリスのこういうドラマだと、何かしら彼らが巻き込まれる展開を予想するのだけれど、
アメリカへ転居した元妻と娘がヨーロッパ観光の途中サプライズで、ダリオの住むトラパニを訪れる展開、
これは絶対に、娘が誘拐されて脅されるだろうと心配するのだが、
エリサとの出会いのエピソードくらいで、特に主筋に絡むわけでもない。これが「いらぬ心配」だった。

もう一つは、ダリオの部下として捜査を進める他の刑事たち。
全員いわくあり気な顔つきで、マフィアと関係があってもおかしくない。
中でも「ノルマン」を演じるマルコ・レオナルディは、若い時は「ニュー・シネマ・パラダイス」の若トト役だったけど
大人になってからは、「レジェンド・オブ・メキシコ」でエル・マリアッチの仲間役だったり、
マフィア役が多かったりしているので、一番怪しいし、「ネイル」役のアレッサンドロ・シャイボも強面。
度々セリフで「警察内に内通者がいるのでは」と出てくるので、誰だろう?ノルマンか?などと考えながら観ていた。

脇役で、ダリオの恋敵となるマウロ・リカーテを演じたフランチェスコ・シャンナが良い味を出していた。
彼は結構他のイタリア映画でも見る顔。
これも、最終話で「いらぬ心配」になり、黒幕は逆に善人顔だった人物だ。

こういうドラマはイタリアでしか作れないだろうなと思う作品だった。