僕は有吉佐和子さんの原作小説が大好きです
悪女の持つ根源的な怖さを間接的に描いている作品です。一見悪女に見えないのがこの作品のおもしろさです
小説では主人公の公子について多くは語られません。ですが行間から人物像が浮き上がってきます
僕の解釈では、公子自身が自分で作り上げたウソに塗り固められた人生を人前で演じているのではなく、信じ切って生きている
人前でわざとらしさはなく、とても自然に振る舞います...
その裏で汚いことをたくさんやっているのですが、その部分は小説に出てくることがなく、周りの証言からぼんやりわかります
一般的な悪女像とはまったくちがう悪女を有吉佐和子さんが描き、僕はその意外性に驚きました
ドラマ版は、かなり的はずれな印象でした
まず現代版にするには、内容がちぐはぐしています。公子が成り上がっていく背景には、戦後のどさくさが大きく関わります
現代に舞台をただ持ってきているだけなので、どう考えてもおかしなことになります
オリジナルの東日本大震災のシーンもなるほど、とはなりませんでした
なにより、公子はわざとらしく見えてはいけない。年代に分けての演じ分けも必要。演技の方向性のセンスが欠けていたように思います