Oto

だが、情熱はあるのOtoのレビュー・感想・評価

だが、情熱はある(2023年製作のドラマ)
4.0
ep1
モテたい、って不純な動機に思われがちだけど、何者かになって今より少しだけ好きな自分になりたい、って思うのは全然良いことだなぁとか思った。
黒澤版『生きる』がリメイクより優れてるのも、「ものを作ることで人と繋がりたい」という欲求を肯定してるから。
自意識過剰・卑屈とか言われがちな二人が国民的な芸人になって活躍してるという事実だけでも元気もらえる。冬野梅子作品的。

とはいえ、期待していただけに今のところ物足りないな〜。相対的にバカリズムの脚本の上手さを実感する。

2009や2021の物語が全然進行しないまま、過去の些細な出来事(特に近鉄やカープ)を羅列されても興味持てないよ。エッセイやラジオの大ファンならまだしも。
『ブラッシュアップライフ』は「徳を積んで人間になる」という大目的がハッキリしていたから、過去のカラオケや成人式も楽しく観られるけど、今作は肝心のそこがないまま、枝葉ばかり見せられてる。

最初にも友情物語や成功ストーリーではないと宣言はしてたものの、バディものとして成立してなくて、全く独立した二つの伝記を同時に描いてるだけに思える。
飲み会で初対面で、同類だから気まずくて仲良くなれない、は作品全体の葛藤として小さすぎるのだと思う。

好きな子のためにダサい自分をオープンにしてでも笑わせに行く、自分が面白いと信じる人が殴ってまで主張してくれた、という「原体験」自体はエモーショナルで素敵だと思うけど、ドラマという線ではなく、点の出来事に見えてしまう。面白い要素たくさんあるからこそ、もっと良い見せ方があったはず。
二方をよく知る作家の方にしか描けないものがたしかにあるなぁと思いつつ、一方でこういうシナリオの根幹で物足りなさを感じてしまって、脚本って難しいな…。

芝居は、高橋くんの話し方が若林さんと似すぎていてすごい、山ちゃんも肌質とか含めてそっくり。

ep2
相変わらず2021の救急車描写は全然効いてないけど、過去描写は物語が始まった感があって面白い。好きな芸人の売れていない頃のネタ見るのすごい好きで勇気もらえるんだけどそういう感じ。

テーマは「勘違いでいいじゃないか」だけど、自分も才能というのは「過信と成功体験」によって生まれるものだと思っている。パンフレット引き出しに入れたままの状態の自分だからこそ、米原先輩(粉雪を歌っていた加藤)が背中押してくれるのグッときた。やっぱり自分だけじゃ動けない生き物なんだな。

オーディションで二人が自分の情けなさをお笑いに昇華しようとするのもすごくよかった。表現ってやっぱり自分の開示であってそれってすごく怖いことだからこそ、自分や誰かが救われるものなんだろう。T字路sも好きなのでありがたい。「天才は諦めた」読み直すか...。

ep3
何も起こらなくて驚いた。
キングコングらしきパンプキンポテトフライ、ダイアンらしきコンビ、元コウテイ九条さんなど、お笑いファンだから楽しめているものの…。

中田青渚、富田望生、もいいキャスティング。『踊り場にて』のキャスト。

就職せずにお笑い続けるだけでも才能だし、スクール卒業するだけでもすごいことだし、やっぱり異常者で尊敬する。

ep4
辛い回。若林父はやなヤツすぎる、笑いの燃料になってるのはわかるけど。モノマネに寄せてタックルしまくる迷走感もつらい。

山ちゃんも、あれくらい真剣になれるのが才能なんだろうけど、「誰かを責めてると自分の弱さを見つめなくて済む」は自分にも切実な問題。
「世の中への反抗心が強くて良いよね」って最近言われたけど、会社や上司ではなく自分の責任と思って進みたいね…。
Oto

Oto