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ハヤブサ消防団のプライのレビュー・感想・評価

ハヤブサ消防団(2023年製作のドラマ)
4.5
東京から生まれ故郷の田舎に引っ越した作家が連続放火事件を目の当たりにし、消防団へ所属して犯人を追った矢先に驚愕の真実へ辿り着くミステリー&ヒューマン・ドラマ。

田舎の一長一短を描いたリアリティあり。連続放火事件を巡るミステリー要素あり。満島真之介さんや梶原善さんをはじめとするコメディ的な面白い掛け合いあり。背筋がゾクっとするホラー的な演出による怖さあり。そして、町に忍び寄る影から予想だにしないジャンルの到来あり。多岐のジャンルに渡りながらも、その全てを収束した先に人間の正義へと到達する。

ビジュアルから想像は出来ないけど、原作は池井戸潤さんの小説。池井戸作品の主なジャンルは企業小説であり、会社や権力者の正義に反して人間の正義を説くのが定石である。本作では会社は登場せず、会社に代わって、人でもモノでもない実体なきものを信用して縋る集団が主人公たちの消防団と対極の立場で登場する。その集団に対して、消防団は仲間という実体のある人間を信用してる集団である。その対比により、他人と実体なきものを共有して利害を生む組織的な関係を作るのではなく、1人1人の人間と心を通わせて信頼関係を作ることの重要性を提示しており、会社以外でのコミュニティにおける人間の正義を説いている。やはり、池井戸さんの作品は「人間の正義」を貫くことであり、本作にて会社以外での人間関係における正義を示したのは池井戸さんの新境地のはず。劇中で山本耕史さん演じる編集者が中村倫也さん演じる小説家に「先生、新境地が開けそうですね~」みたいなセリフを喋っていたけど、それは池井戸さん自身を指していたのでは?(池井戸さんの作品を全て読んだわけではないから知らんけど。ただ、映像化作品に限って言えば、企業以外を舞台にした作品は少ないかと思う。)

序盤は、田舎のリアルな実態がしっかりと描写されている。多くの男性陣が消防団に入団している。慣習的な行事の当番制。そして、娯楽施設が枯渇してる村社会で、極上のエンタメと化してしまう噂話。美しい自然や近所との強い結び付きで共生できる一方、小さな世界から肩を組まれているような縛りを忖度なく描いている。田舎に移住希望の方は本作を観ましょう(笑)誰もが、中村さん演じる主人公のように溶け込めるわけではありません。

地元の知り合いかつ消防団に所属する近所の方によると、消化活動の一連の流れについて、しっかり監修を行っている。消防車が到着して、そこからワンカットでホース等を接続して放水するのは、ワンカットならではの臨場感がある。また、操法大会の動作も忠実に再現している。ただ、消防団に入団したばかりの主人公を4番員(消防車を操作して放水させる係。操作精度が問われ、他の係より難易度が高い)に配置したのは悪手。主人公の若さを加味するなら、まずは覚えることがシンプルな1番員(筒先とホースを持って火点まで走り、放水して的を倒す係。ドラマでは梶原善さんが担当)をさせるのが妥当とのこと。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐
星の総数    :計18個
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