りっく

初恋、ざらりのりっくのレビュー・感想・評価

初恋、ざらり(2023年製作のドラマ)
4.0
軽度の知的障害云々ではなく、なぜ周囲は当たり前のようにできているのに自分だけできないのだろう、そんな自分は周囲に必要とされていない、そう思われているのに優しい言葉をかけてくる周囲の気遣いにまた傷つくという自己肯定感の乱高下に圧倒的なリアリティを感じた。

それでいて、そんな彼女を雇用するマネジメント側、あるいは好きになった彼氏側の視点もきちんと描写されるのがフェア。こちらはこちらで周囲の目や関係性に悩まされ、そんな姿を見た彼女もまた自責の念に駆られるという負のスパイラルから、どのように二人だけの関係性を構築していくかに焦点が当てられるのがいい。

ラストの着地は、ふたりの関係性に便乗して周囲の人間模様も丸く収まったげに見えてしまう都合の良さはあるものの、小野花梨と風間俊介の優しいがゆえにお互いを傷つけてしまうナイーブさを見事に演じきり、作り手もふたりの感情を丁寧に掬い取り、ドラマを紡いでみせた。このクール一番の拾い物。
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