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ホラー・オブ・ドロレス・ローチのhasisiのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

【主な登場人物】🎧️🎤
[エレナ]ドミニクの祖母。
[ギデオン・パールマン]家主。
[ケイレブ]ポッドキャスター。
[ジェレマイア]配達。
[ジョージ]大学の同級生。
[ジョイ]韓国系の女性。
[ジョナ]ギデオンの息子。
[ソフィア]ネリーの祖母。
[ダビサ]刑務所仲間。
[ドミニク]元カレ。
[ドロレス(ドロ)]主人公。
[ネリー]料理屋のレジ。
[フローラ]女優。
[ヘクター]髭面の売人。
[マーシー]女性の売人。
[ルーシー]探偵。
[ルイス]料理屋。

【概要の後にアラスジを】🏙️🌮
2023年にAmazonプライム・ビデオで公開されたテレビシリーズ。
ジャンルは、ブラックコメディ・ホラー。

原作は、
ポッドキャスト専門のギムレットメディアで公開されたもので、アーロン・マークによって書かれている。
それ以前は、オフ・ブロードウェイで女性の一人芝居として公開されていた。

アーロン・マークは中年男性だが、詳細分からず。
本作でも6、7話以外の脚本を担当している。

ショーランナーは『レポーター・ガール』のダラ・レズニックが担当。
1978年生まれ。ニューヨーク出身の女性。
本作では、3、6,7話の脚本に参加している。

30分8話で、制作は、ブラムハウス・テレビジョン。
※アラスジを最後まで。その後に感想を。⚠️

🥟〈EP.01 マジックハンズ〉🌿🚬
米国の大西洋岸中部にあるニューヨーク州。ニューヨーク市。
オフ・ブロードウェイである、ブリタニア・シアター。女優のフローラは、一人芝居。題材は、実在した猟奇殺人鬼の話。
芝居は盛況で幕を閉じたが、楽屋にモデルにした本人、ドロレスが現れてしまう。
死んだと思われていた彼女の語りによって回顧録がはじまる。

2003年。ドロはヒスパニック系で、男勝りな性格。彼氏のドミニクを手伝い、大麻を販売して生計を立てていたが、警察への暴行も含めて逮捕されてしまう。
ドミニクに連絡がつかないまま16年の歳月を刑務所で過ごした。

身より無しで200ドルだけ握らされて行く当てもなし。逮捕時に住んでいたマンハッタンのワシントンハイツに戻るが、高級住宅地に生まれ変わっていた。
暮らしていたアパートを訪ねるが、ドミニクはすでに引っ越した後だった。

浦島太郎状態で途方にくれて街をさまようと、行きつけだった“エンパーダ・ロカ”が残っていた。経営者の息子だったルイスと再会を果たす。
地下に誘われて、大麻を吸う。2019年のNYではまだ違法。ドミニクの姿は、ドロが逮捕されて以来、見ていないらしい。

[ルイス]🔪
・アパートの1階にあり、テイクアウト中心の飲食店を個人で経営している。肉屋がコロッケを販売して、テーブル席でも食べられる感じ。
・エンパーダは具入りパン。皮の厚い焼き餃子のようなもの。
・元カレ、ドミニクの話をしている間、肉を切る手さばきが荒くなって殺意を感じる。
・家主から立ち退き命令が出ていて、商売はぎりぎり。
・大麻で鬱が出るなど、精神が不安定。

亡くなった父親の部屋を提供され「いつまでも居てくれていい」とサービスしてくれる。
「昔から好きだった」と言われて気持ち悪かったが、渡りに船。ドロはシャワーを浴びながら解放感を味わっていた。

💪🏽ドロレスは元ヤンで豪快。背は低いが、日本の女子プロレスラーより分厚い体と腕をしている。特技はマッサージ。
いまのところ猟奇殺人に繋がる要因は見当たらない。

🥟〈EP.02 破滅の部屋〉🕯️💆🏻‍♂️
韓国エステで面接を受けるが、犯罪歴がばれて不採用に。
昔の知り合い、マーシーから売人の誘いを受けるが断る。
エンパーダ・ロカでレジをしているネリーは協力的。ビジョンボード作りを手伝ってくれた。
ルイスが「店の地下で商売を行っていい」と提案。1回20ドルでマッサージ店をオープン。

商売は順調。腕の良さでウワサが広がり、顧客は増えつづけた。
マッサージ台も購入。配達のジュレマイアが搬入を手伝ってくれる。だが、
「店の生ゴミが日にひに増えている。いずれ潰れるぞ」
店に戻ると、家主のパールマンが訪問。家賃を滞納しているルイスと口論に。
ドロは貯めた金で家賃を支払おうとするが、16年前と比べて15倍に跳ね上がっていることを知る。

家主の服を脱がせてマッサージ。1週間の猶予を与えられたが、どう転んでも支払える額ではない。
ドロの中で、上から目線で見下す家主への殺意が芽生えていた。

💸NYの家賃高騰がトラブルのネタに。ホームレスになる苦しみがそのまま反映されているので、現地の人は感情移入しやすいだろう。

🥟〈EP.03 赤ん坊のように〉🥩🪚
映画のように頸椎をねじ切ってやろうと頭を掴んで回転させたが、上手くいかなかった。
もう後戻りできない。
驚き、抵抗する家主の背中に馬乗りに。両手で静脈を抑え、怪力で締めつけるドロ。マッサージ台は暴れる男の衝撃を吸収し、びくともしなかった。

店番のルイスには、家主はマッサージ中に寝てしまったので地下に行かないよう、釘を刺してから外出。
とりあえず、袋につめて川に流す計画。雑貨屋で道具をそろえる。

店番がネリーに交代している。地下にもどると家主の死体は消えていた。テーブルには書き置きが。
“俺に任せろ。助かったよ”
大麻を吸って心を落ち着かせる。いつのまにか眠ってしまったらしく、ネリーの声で目が覚めた。窓の向こう側、道行く人々に新商品の試食を勧めている。

商品名はムイ・ロコ(とっても強烈)。店はいつになく客で賑わっている。ルイスは新世界の扉を開けてご満悦だ。
「あの強欲なジジイが噛み砕かれて肛門から放出される。糞同然だからな」
何の肉でも肉には変わりない。人間が牛や豚を食えるのは勝者だからだ。

狂ったルイスに驚きはしたが、隠蔽工作には成功していた。そう思えた数日後。家主の息子、ジョナが警察官を連れて店にやってきた。

🥟〈EP.04 刑務所か、地獄か〉🗡️💊
訪問の理由は、殺人の容疑ではなく家賃の支払い要求だった。
ネリーが話題を反らしてくれる。ジョナは、行方不明になったパパのエンパーダを食べてから水漏れの修理へ。

在庫が切れてムイ・ロコは完売。一方、ドロはハドソン大学への復学を夢見ていた。
売人のマーシーが現れ、マッサージをサービスする。
洗面所で休憩してから戻ると、マーシーが箪笥を物色している。羽振りがいいので、島を荒らす商売敵だと勘違いし、ナイフを握って薬を探している。マッサージ台も切り刻んで。
「16年前。ドミニクはガサ入れがあると知って、あんたを身代わりにしたんだ」

紙幣をばらまいて帰るマーシーに、ドロは背後から襲いかかった。乱闘になり、振り下ろされるナイフ。腕を握って防ぎ、思い切り噛みつく。
壁に押しつけて首を絞めるも、アロマキャンドルで米神を殴られてドロは転倒。ナイフをとりにいくマーシーの足を掴んで転ばせた。顔面から椅子に倒れて前歯が消失。口から大量の鮮血がしたたる。
ゆっくり背後から迫り、首に太腕を回す。チョークスリーパーの餌食に。

ルイスに新しい肉の調達を知らせ、ドロは刑務所を訪問。同室だったダビサと面会した。片腕だがマッサージの師匠である。以前聞かされた、人探しのプロを紹介してくれるよう頼んだ。

🥟〈EP.05 必ず見つける〉📓🖊️
ドロは探偵のルーシーと対面。調査期間を踏まえて次は2週間後に。
配達のジュレマイアが、肉の仕入れ先を変更したルイスを怪しんでいる。
ルーシーはすぐに店に現れ、ドミニクの死亡を伝えた。ドミニカ共和国で12年前に起きた火災が原因だとか。

家主の息子、ジョナが父親を探しはじめたのだが。お節介な凄腕探偵、ルーシーとバッティングしてしまう。
危機的状況を相談するためにルイスの部屋を訪ねた。そこには恐竜のポスターやヌイグルミが飾られていて、子供部屋のまま。
エアコンで冷やされたバスルームには、解体後の2つの死体の残骸が逆さ吊り。まるで食肉処理場のようだ。

ルイスはブルックリンまで移動し、家主の携帯からジョナの携帯にライン。
“ギャンブルで借金ができたからしばらく身を隠す。心配するな。”
安心した息子は調査依頼を見送り。作戦が成功してルイスは歓喜した。
「あんたは俺が絶対に守る。運命の人だ」

はじめて肌を重ねたが、ルイスはクンニ上手。だが、太ももに噛みつくなど、いかせてくれない。その上、自分でこすって太ももにぶっかけたあげく、舐めとる変態ぶり。
ドロは、ルイスが人肉食いの異常者だったことを痛感していた。

ルイスは、ドミニクの調査依頼が誤りだと指摘する。3年前に祖母に荷物を郵送しているらしい。ネリーの祖母、ソフィからの情報だった。
「あのクズ野郎は逃亡するために死を偽装したんだ」

🥟〈EP.06 まばたき2回で〉🤼‍♀️🚛
ドロは3階で暮らすソフィアの部屋を訪ねるが、門前払い。
家主の息子、ジョナはネリーと恋仲になり、店に入り浸っている。支店の提案まで。

髭面の売人、ヘクターがドロの客としてやってきた。殺害したマーシーの部下だったらしい。
ココナッツオイルを塗ってマッサージするが、ヘクターはナッツアレルギーでアナフィラキシーショックに。彼の指示で上着のポケットに入っていたアナペインの使用を試みるが『パルプ・フィクション』の知識で心臓に突き刺してしまう。

ルイスに報告するために店に行くと、公衆衛生局の相手で忙しい。
地下に戻ると、探偵のルーシーが現れた。家主の携帯をロングアイランド鉄道近くの公園のベンチで発見したらしい。社会保障番号でロックを外し、スマホ内のペースメーカーのアプリを起動。
「ペースメーカーはここにある」

マッサージ台のヘクターを見られて逃げられるが、しがみついて取り押さえた。
チョークスリーパーを試みるが、のびた爪で喉を引っ掻かれて距離が空く。割れたキャンドルの瓶を握られ、ヘクターを挟んで対話に。逃がすように交渉してくるが、ドロがマッサージ台を倒すと、ヘクターの巨体がルーシーの華奢な体にのしかかった。

ドロはアザラシのような巨漢の上にまたがり、潰れたルーシーを圧殺にかかる。
ヘクターが蘇生。
ドロは割れたガラスの破片を握り、男の脇腹に何度も突き刺した。
さらにルーシーの口を抑えて呼吸を止めにかかる。

ルイスと共にヘクターの死体を風呂場に運び。血抜きをするために縛って逆さ吊りに。
「まずくなる前に急いで解体しよう。大量のエンパーダが作れるぞ」

街の空気を吸いに行くと、配達のジェレマイアはストーカーと化していた。
彼はルイスとの秘密に気づいていて「仲間に入れてくれ」と頼んできた。
もう潮時だった。
ドロは店に戻り「ジョナに店を売却して逃げよう」とルイスに提案した。

🥟〈EP.07 さよなら、フェリシア〉🧊🐷
ジョナは父のサインが手に入らないので、売却希望価格の5%の1万5000ドルしか支払えない。
ドロが週末の家賃収入で支払う代替案を提示。ジョナが了承した。

ドロのためにルイスがオハイオ州の免許書を偽造。新しい名前はフェリシア。
アパートの排水溝が壊れて、住人たちのバスタブに血抜き中の血が逆流するトラブルが。
ネリーの祖母、ソフィアが転倒して、病院送り。ドロが介抱して距離が縮まる。
ドミニクはクリスマスに祖母にプレゼントを贈っていた。オーストラリアなまりの女が代行していたらしい。

同級生のジョージで間違いなかった。勤務先の大学を訪ねて再会したが「20年会っていない」ととぼけられる。

エアコンも壊れて、肉の保存は氷に。人肉の処理で忙しいルイスを手伝い、1階にある倉庫型の冷蔵庫に移してゆく。幸い、ネリーはここが嫌いなので、見られる心配はない。鍵をかけて万全。

朝起きるとキッチンでジョナが朝食を作っていた。
鍵に安心して外で栽培している大麻を嗅ぎながらキッチンに戻ると、何故か冷蔵庫の扉が開いていた。中ではしゃがんだジョナが、自分の父親の頭部と対面していた。
ドロは背後から忍び寄り、頸椎切断に挑戦。ジョナの頭を勢いよく回転させると、青年の体は床に倒れて動かなくなった。

🥟〈EP.08 私を止めて〉🔥🎤
冷蔵庫の鍵には、暗証番号が張られたままだった……。
ジョナの死体を運んでいると、ネリーが出勤してきて、急いで戻す。
警察官が訪ねてきて事情聴取。行方不明になっている売人のマーシーの件で疑われている。

ドロは地下室で逃亡の準備。ルイスは「俺にいい考えがある」と言って出ていった。嫌な予感がする。
最初にエステを紹介してくれたジョイが地下室を訪ねてきた。忙しいのでマッサージを断ると「大半の客は私が紹介したのだから10%の紹介料を払って」と言うから肩こりを揉み解してやり、ついでに首をへし折った。
大麻を吸って心を落ち着かせる。

アパートの住人たちは失踪事件の話題で持ち切り。ネリーはドロを心配している。
――冷蔵庫の人肉が消えている。
ドロは今すぐでも出ていきたいが、ルイスは発見したジョイの死体処理で忙しい。

警察官がやってきてネリーが逮捕された。ルイスが死体をネリーの部屋に移して通報したらしい。
ドロは椅子に座ってため息をつく。床をぼんやり眺めていた。
「あんたが店をやって、私がマッサージ。ただ平凡で普通の暮らしがしたかっただけなのに」

ドロが出発しようとすると、配達のジェレマイアが乗り込んできて、車で逃がしてくれると言う。
サイコキラーの女を巡って、ストーカーと、人肉シェフの口論に。
「お前の異常さに気づいた父親を地下室に閉じ込めただろっ」
「陰謀論に取り憑かれた男の話なんて誰も信じねぇ」
取っ組み合いに。ルイスが投げ飛ばして、ジェレマイアの喉がタオル掛けに直撃。血管が裂けたのか、血を吐き、喉を詰まらせて死亡した。

いますぐ逃げ出したいドロは地上への階段を上り、追いかけてくるルイスを蹴り落とした。
追いすがるルイスにキスして油断させ、煮えたぎる油の中に顔面を押し込んだ。
ジェレマイアのトラックを奪って逃走する。

それから4年の月日が流れた。ドロはドミニクを探すも、見つけられずに現在にいたる。劇場の看板で自分の名前を発見し。女優、フローラの楽屋に忍び込んだのだった。
「私が殺すのは邪魔をするか、困らせた奴よ」
戯曲を書いたのはアパートの住人で、事件を取材していたポッドキャスターのケイレブだった。さらにテレビ化の話が進んでいて、彼は有頂天になっている。

コートの預かり所で2人は再会。ドロはケイレブをチョークで絞め、マイクを喉に突っ込んで拷問する。
「ドミニクの居場所を知ってる」
ドロが運転し、助手席のケイレブの案内で深夜の豪邸へ。
玄関扉を開いて出てきた男を見てドロは爆笑。つぎの瞬間、両眼に殺意が宿り、男の首へと両手をかけた。


【ドラマを振り返って】🍽️🍖
🤬加害者視点。
個人商店の経営が苦しくなる、よく見かける光景。飛びぬけた商才が求められ、大企業に呑まれてゆく世知辛い世の中。
殺意の流れが自然で、犯罪者の犯行動機や心理状態を知ることができる。
家主と言うより、時代の流れに対して苛立っている。

心の奥底に押し込められている現代人の行き場のない怒りが吹き上がって、感情移入しやすかった。

気に入らないやつら皆○し。
回が進むごとにどいつもこいつも天に召されて、コメディ色が強くなってゆく。
次第に脇役を見るたびに「こいつもあの世行きだな」と感覚がマヒしていった。

👨🏽‍🍳殺人家業。
疑似家族のありがたさ。ヒスパニック系らしく、助け合いの精神が心に染みる。
家に住ませてくれたルイス。不愛想だが、親切なネリーが天使のよう。
楽観的で明るく、すがすがしい。

日本でも丁度『札幌・すすきの頭部持ち去り事件』が起きていてタイムリーなネタ。
こちらの家族は犯行前に刃物を購入していて計画的。現実は小説より奇なり。

わたしの幼少期、テレビでは『ケンちゃんシリーズ』なるコメディが放送されていた。
主人公は『サザエさん』のカツオくんのようなキャラで、シーズンごとに家業がパン屋になったり、カレー屋になったりしていた。それを思い出した。
滅びゆく街の個人経営の店の裏側で殺人が繰り広げられている。日本にも落とし込みやすく、テレビ向きの題材だった。

カニバリズム。
肉を食べる人と食べない人。本作の脚本家と『ボーンズ アンド オール』の原作者の出した結論が同じで苦笑。
世界征服と世界平和のように、極端な人達は思想が真逆なはずなのに区別がつかなくなる。

🔔バディもの。
主人公のドロレスが殺害担当。中盤までは敵意を向けられての犯行だが、実際は「秘密を知られる」がトリガーになっていて、敵意がなくても事故として処理されていた。
被害者面して、とぼけているだけで「サイコパスなのでは?」と疑っていると、終盤に本性が露わになる。

ルイスが死体処理担当で、手伝ってくれる役。
絶対愛、万能、サービス満点。優しくていつも笑顔で全てを受け入れてくれる。

ドロレスがのび太君で、ルイスがドラえもんだと思えばしっくりくる。
「ドラえもんまた人を○しちゃったよぉ」
「しょうがないなあ、のび太君はぁ。肉切り包丁~」

マッサージ師の許可証も、免許書も偽造してくれるし、罪が表になれば全部被ってくれる。わたしもルイスのようなロボ、じゃなくて友達が欲しい。
寝ている間に解体されてエンパーダの具にされそうだけど。
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