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ブラック・ミラー シーズン1のhasisiのネタバレレビュー・内容・結末

ブラック・ミラー シーズン1(2011年製作のドラマ)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

【概要からアラスジへ】🏦🤵🏻‍♂️
2011年に公開された、SFアンソロジーシリーズの第1弾。

サブスクで話題のテレビシリーズに色々手を出したのですが、好みの物が見つからず。
シーズン6が面白かったので、ブラックミラー(BM)に頼ることに。

現代版『トワイライト・ゾーン』
最新のテクノロジーと、その副作用について取り扱っています。
初期は3つのエピソードで構成されていました。

制作総指揮は、チャーリー・ブルッカー。1971年生まれ。イギリス出身の男性。
ジャーナリストを経てテレビの世界へ。
今回はEP.01と02の脚本を担当。
社会風刺の専門家で、2006年頃は、ニュース映像を繋ぎ合わせて、笑いのネタにする『チャーリー・ブルッカーのウィークリーワイプ』をやっていました。

※アラスジに感想を添えて最後まで。その後に振り返りを。⚠️

🪞〈EP.01 国歌〉📹🐖
イギリスの早朝。ダウニング街10番地。
マイケル・キャロウ首相は電話で起こされ、王室のバーモンド公爵夫人であるスザンナ王女の誘拐を知らされた。
官邸のリビングで誘拐犯から送られた動画をスタッフと鑑賞。緑のドレスを着たスザンナが後ろ手に縛られ、椅子に座らされている。
友人の結婚式の帰りに拉致され、2名の警護が意識不明の重体に。
泣きながらカメラに向かい、犯人からの要求を読みあげるスザンナ。
「午後4時にすべてのネットワークは、首相とブタの性交を生配信して!」

誘拐動画はすでにYouTubeで公開されて数万人が視聴。Twitterでも拡散。世界各国の放送局で取り扱われるトップニュースに。
国内の放送局UKNのアンケートだと、見たい視聴者は28%。
記者のマライカは、官僚の友人に電話。ヌード画像を報酬に、情報をリークしてもらう。

国が貸し切った撮影スタジオ。
コレット捜査官が映像制作会社に依頼。特殊効果でエミー賞を受賞したノエルが呼ばれ、動画撮影の準備をすすめる。有名AV男優、フリンの体に首相の頭を合成させる計画だ。

一方、MI5は最西端の都市、トゥルーロに犯人のアジトを発見。
特殊部隊は昨年に閉校された大学のキャンパスに到着した。
リーダーのウォーカーが双眼鏡で建物内を確認して待機する。
残り3時間に。

UKNのニュースデレクターに差出人不明の小包が届いた。中にはUSBと手の小指が。スザンナが身に付けていたエメラルドの指輪をしている。
USBには、犯人が切った指をカメラに見せる動画が入っていた。
「ダウニング街がルールを破った」
内務大臣のアレックスは、動画の偽造を首相に黙っていたので叱責。スタッフの1人がTwitterに俳優の写真をあげたらしい。
キャロウ首相の支持率は急降下。ブタとやるべき、が86%に変化した。

尻に火のついた首相は、ウォーカー・チームに突入命令。
武装集団が教室に乗り込むも、椅子に縛られていたのはマネキン。捜査をかく乱するための囮だった。
教室の外から携帯で撮影していた女性を発見。
逃げる彼女はマシンガンで脚を撃たれて転倒するが。機密情報を手に入れて取材にきていたUKNの記者、マライカだった。

万策尽き。保身のために王女を犠牲にした首相として闇に葬られるか、やるか。
黒塗りの警護車はバンクサイドのスタジオに到着。
首相のワイセツ動画の生放送が告知され、テレビの前で国民が色めき立つ。
真っ黒な幕に覆われたスタジオの中央には丸々育ったメスブタが餌を食べている。
「スザンナ王女の安全な帰還を心より願っています」
首相がカメラマンの前でズボンを脱ぐとテレビの前では歓声が上がったが、それはすぐに嗚咽に変わった。

セントポール大聖堂の前。ミレニアム橋に緑のドレス姿のスザンナ王女が解放された。国民の誰もがテレビに釘付けで、街には人っこ一人いなかったので、犯人が目撃される事はなかった。
犯人と思しき人物は首吊り自殺。のちのDNA鑑定の結果、テレビ局に送られた小指は彼のものだと分かった。

1年が経過。女王を救ったキャロウ首相の支持率は回復。
首相夫婦は予定された行事に参加しては公の場で笑顔を振りまく。仲睦まじい姿を国民の前に披露していた。だが、官邸に戻ったジェーン夫人は、首相に話しかけられても無視。ブタとやった夫は、壊れた夫婦関係に深くため息をつき、肩を落としていた。

🩳群像劇。
冒頭のつかみで笑うも、政治家をおとしいれる文化に不慣れで、じょじょに寒気が。
BMの1話目で、首相に獣姦させたかったブルッカー頭大丈夫?

2010年はインターネットの利用者の割合が、携帯がパソコンを上回った年。
犯人の目的は分からないが、当時注目された文化である“拡散”と呼ばれるネットでの情報の広がり。新しいテロの形が表現してある。

🪞〈EP.02 1500万メリット〉🖥️🚴🏿‍♂️
人々はビル状の閉鎖空間で暮らしている。照明が灯った室内は真っ黒な壁で覆われ、窓1つないから、朝も夜も明るさは一定に保たれている。
住人は個室に別れ、4畳ほどの部屋に半分を埋めるベッド。4面の壁いっぱいの液晶ディスプレイには、つねにどぎつい光で映像が流れている。

ビングはここで暮らす住人の1人で、通貨の役割を持つ“メリット”を1500万2944持つ、比較的リッチな部類の人間だ。
1500万は昨年亡くなった兄から引き継いだものだった。
ただし、メリットにはアバター用の装飾品の購入、四六時中流れてくるエロ動画広告のスキップ、自動販売機での食事の購入など、ディストピアを楽しむための使い道しかない。

起床すると、洗面を済ませて他の者たちと共に職場へ。個人用のディスプレイの前でエアロバイクを漕いで、発電するのが仕事。
休憩時間に食事をとり、仕事が終われば、狭い箱の中に帰宅。音楽を聞くか、ゲームで遊ぶかして就寝時間を迎える。
毎日はその繰り返しだ。

肥満体が理由で一連の流れから脱落した者は、黄色い作業着の清掃員に。あるいは、大食いネタで笑われるコメディアンとして、ショート動画の演者の道に降格される。

そんなある日、ビングは共用トイレで鼻歌の上手い女性、アビと出会った。
彼女の歌は、ビングの心に響き、奴隷のような日々から目覚めさせる力を持っていた。

ビングは彼女のことで頭がいっぱい。数日後の食事休憩で話しかけ、ホットショットへの挑戦を勧めた。
「メリットがない」と笑う彼女に、ビングは「自分が1200万プレゼントする」と提案した。
ホットショットとは、Xファクター形式のリアリティ・パフォーマンス・オーディション番組。
合格してスターに昇格できると、自転車漕ぎから解放。8つあるチャンネルの1つに配属されて、広い個室を与えられる。

挑戦チケットが1500万に値上がりして、貯金のほぼ全額をプレゼント。残りは8407Mに。
アビは3人の審査員と、ディスプレイに映る観客席に並んだ大勢のアバターの前で歌を披露する。だが、歌手は供給過多。初心で美形なのでAVチャンネル送りで、女優としてスターの仲間入り。

ビングの部屋にも男優と絡むアビの映像が流れてくるが、メリットがなくてスキップできない。自分の提案の影響に発狂寸前。暴れて壁のディスプレイを破壊。ガラス片が部屋に散乱した。
それからビングはもくもくと働き、食事は他人の食べ残しでしのぎ、メリットは全額貯金。
いくつもの季節で自転車をこぎ続けて、ホットショットへの出場チケットを購入。
3人の審査員と観客が待つステージへ。

素人ダンスを披露してブーイングを浴びるが、ズボンの後ろに隠しておいたガラス片を自分の喉に当てて演説に。
「お前ら審査員は俺たちを消耗品としか見ていない!」
俺たちが受け取れるのは偽物だけ。デブを見下す権利があると思い込まされている。
アバターの帽子を買うような幻想でしか自分を表現できないんだ。
麻痺した心が暴走しないよう、あんたらの搾りカスだけ与えられている。
俺たちは無意味な電力を発電するために、マシンを漕ぎ続ける。
「えらそうに椅子に座って世界を腐らせやがって、その顔もマヤカシもうんざりなんだよ‼」
――俺がやっと見つけた本物を奪いやがって。また1つ醜いコメディを生み出しやがった、この糞野郎どもがっ。

ビングの「ファック」の連呼が止み、静まりかえった会場。審査員席に座っていたコメディチャンネルのボスであるホープが口を開いた。
「君の言葉は今までの中で1番心に響いたよ」
観客からも拍手喝采。ビングはスターに昇格。週2回、30分番組を任されることに。
広々した個室を与えられ、カメラに向かってショーを披露する。喉に当てるガラス片は彼の大事な商売道具になった。

🎁現代を誇張して映像化。
起床→仕事→エロ動画かゲーム。
普段の生活そのままで頭がおかしくなるかと思った。
既存概念だと、ポイントの消費でバットエンドするのだが、管理者側には人間電池の廃棄処分にメリットがないので、壊れるまで地獄が終わらない。

心に響く、も視聴者にとっては感動ポルノとして消費されてゆく。
てっきり騙されてポイント消費して自殺するのかと思えば、配信する側に昇格するとは思わなかった。

EP.01もそうだけど、現代を皮肉っているようでも、視聴者に奮起を促しているようでもあり、微妙なラインを突いてくる。
(まあ、わたしは普段の生活に戻りますけどね)

🪞〈EP.03 人生の軌跡のすべて〉👀▶️
近未来のイギリス。
この世界では、自分の目で見た映像と耳で聞いた音がすべて記録されるコンピュータ「グレイン」を耳の後ろに埋め込む技術が普及している。
職場に出勤していた若い弁護士であるリアム・フォックスウェルは、新体制の上司に会議室に呼ばれていくつかの質問を受けた。
内容は、「子供が記憶をさかのぼって、親を訴えるケースについて」
帰りのタクシー。リアムは評価会議の記憶を再生し、上司が自分を切るのか、残すのか気がかりで、表情を読み取るのに必死だ。

退社後は妻、フィオンの友人宅のディナーパーティにお呼ばれ。
髭面の男、ジョナスと妻の親しい間柄や、紹介された友人たちの会話から、元カレだろうと察した。
8人で食卓を囲む。ジョナスはリーダー各でプレイボーイ。
元カノとの体の相性の良さや、ナンパした女との“お気に入り填め撮り”を再生しながら自慰する話など、性に開放的で野性味のある態度。

夫婦はタクシーで自宅に戻った。子守りのジーナは夜も遅いのでゲストルームに宿泊。すでに息子のジョディはベビーベッドで寝ていた。
リビングでワインを飲みながらリアムは、しつこくジョナスとの過去を聞きたがる。
記憶の映像で確認しながらフィオンは、旅行先のマラケッシュで出会った元カレがジョナスだと白状させられるが。誘導尋問で、滞在期間が1週間ではなく、実際は1ヶ月だったと口を滑らせた。

その夜のベッドでの営みは、横向きに寝ての単調なバックのみだが、激しかった夜の記憶によって、互いに好きな体位を再生しながら腰を振る。
事後のリアムはリビングに戻り、8人の食卓の映像を何度も再生しては朝まで飲酒。ジーナにも見せてダル絡み。
友人の1人がパーティの過去映像を流していて、その端の方をズームすると、キスしているフィオンとジョナスが映っていた。恋愛は旅行後もつづき、期間は半年だったと分かった。

リアムは車を運転して、ジョナスの自宅に乗り込み。
勝手に酒を飲み、取り押さえようとした彼を殴り、フィオンとの記憶映像をすべて消すように強要。
彼の記憶のサムネの1つに、自宅のベッドでほほ笑む妻の姿が。
自宅に戻ってからは、今度はフィオンに「ジョディは本当に僕の息子か?」と絡む。
ゴムで避妊をしたかどうか確認するために、記憶の再生を迫った。
間男と妻がベッドで絡む動画を眺める夫の隣で、フィオンは顔を伏せて泣いている。寝室には喘ぎ声が響いていた。

数日後の自宅。
リアムは家族3人で幸せに暮らしていた頃の動画を繰り返し眺めているが。実際の室内は荒れ果て、すでに妻と息子はこの家を去っていた。
リアムは洗面台の鏡の前に立つと、耳の後ろにカミソリを走らせて皮膚を切開。ペンチで「グレイン」のチップを毟り取った。

🙎🏻‍♂️男の嫉妬。
「寝取られ夫」だけど、プライドが高くて「目には目を」で、復讐して家族を失う結末に。
ジャンルものとしてはセオリーに違反しているが、性格だから仕方ない。
これだけ、ジェシー・デビッド・アームストロング(1970年生まれ)が脚本を担当。
ブルッカーだと体制に向かう攻撃性が、家族に向かっている。

記憶の巻き戻しと再生の共有。
取調室の可視化のようなもの。
一見すると、白黒はっきりして不毛な争いから解放されそうだが。
実際は離婚に直行するだけ。
人間関係は映画と違い、辻褄が合わない事ばかりなので、ろくな結果を生まない。
(文章を扱う人間がおちいる一種の職業病)

「やった、やってない」の口喧嘩が好きな人が書く物語。
プライドが高い=努力家。「自分は頑張ってきた」と過去へのこだわりが強い。
全映像を記憶するなんて機械が登場したら、堅実な人の腰はさらに重くなるだろう。

忘れる大切さ。聞き流す大切さを自省的に教訓として。
できるだけ脳の処理を軽くするために。人間関係は適当にやって、良好な関係を長続きさせる事を念頭におく。
周りの仕事を馬鹿にして「大したこない奴」と自分の力を鼓舞しても、裸の王様まっしぐら。
死ぬまでには子供の理屈を卒業して、大人の余裕を手に入れたい。


【ドラマを振り返って】🥤🍟
自己確立。
EP.03だけ、社会ではなく、自分の内面と向き合っていて文学に近い。
同じタイプの人以外には刺さらない、退屈な物語だけど、大切。
社会と向き合う前に、自分の過去を振り返り「一体、どんな人間なのか?」をきちんと理解しておかないと、土台ができない。

自分がないがしろだと、
「いまの発言が個人の趣味なのか、それとも客観性を帯びているのか」が分からないまま、「名作だからとりあえず観ろ」と命令するような、趣味の押し売りはよくある光景。
社会派の作品をやりたい人ほど大事な通過儀礼だ。
データをとらないで「客観的な視点なんて存在しない」と他人の受け売り。論破したつもりで満足し、脳死するのは論外。

💸自己犠牲。
硝子を割るポスターがそうだけど、主人公が誰かに尽くして、傷つく物語で構成されている。
純粋なギバー(与える人)
わたしはマッチャー(バランスをとる人)なので、「わかる~」とは思わないけど、ギバーは基本的に人に好かれるので、自然に楽しめる。

🪖ゲリラ思考。
ダークコメディをやるのに必要な素養だろう、体制に対する反骨心が強い。
庶民代表。
ただ、御上に噛みつく大切さを説かれても、「そうですね」で今一ピンとこない。
この感覚も、わたしの中に無いので、好きなジャンルだけど、自分でやるのは違う模様。

13年前の作品だけど、CGの質が向上しているだけで、いまとあまり変わらない印象を受けた。
GAFAM帝国の下で安楽な生活を享受しているのが悪いことなのか分からない。
変化を嫌うわけじゃないけど、テロのような極端な選択は勘弁してほしいですね。
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