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戦慄の絆のhasisiのネタバレレビュー・内容・結末

戦慄の絆(2023年製作のドラマ)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【主な登場人物】🏥🤰
🚣🏼‍♀️マントル家。
[アラン]父。
[エリオット]姉。おろし。
[グレタ]家政婦。
[ビヴァリー]妹。まとめ。
[リンダ]母。

💊パーカー家。
[スーザン]レベッカのPTR。
[レベッカ]投資家・眼鏡。
[マリオン・ジェームズ]レベッカの父。
[フローレンス]妊婦。

📝その他の人達。
[アグネス]ホームレス。
[サミー]ジェネヴィーヴの弟。
[サンライス・ジョーダン]記者。
[ジェネヴィーヴ・コタール]女優。
[ジョゼフ]姉妹の手伝い。初老。
[トム]ラボの同僚。
※略称。エリオットをエリ。ビヴァリーはビヴァ。ジェネヴィーヴをジェネに。

【概要】👶🏼👶🏼
2023年にAmazonプライム・ビデオで公開されたテレビミニシリーズ。
ジャンルは、サイコスリラー・ドラマです。

ショーランナーは、脚本家のアリス・バーチ。
1986年生まれ。イギリス出身の女性。
戯曲出身。
映画だと『聖なる証』に参加。『レディ・マクベス』の脚本家でもある。
男勝りで威風堂々とした作風。
今回は最初と最後のエピソードを担当しています。

1977年の小説『戦慄の絆』
1988年のデヴィッド・クローネンバーグ監督の同名映画が原作。
双子の主人公が性別反転しています。
オマージュも多いので、原作を観ているとにやにやできます。

※アラスジを最後まで。エピ終わりか、その後に感想を。⚠️

【あらすじ】👩🏼‍⚕️👩🏼‍⚕️
👭〈EP.01〉🚛🍔
米国。ニューヨーク州にあるウエストコット記念病院。
エリオットとビヴァリーは双子の姉妹で婦人科医。
2人とも同じ病院で働いている。
妹のビヴァは助産が専門で引っ込み思案のレズビアン。
姉のエリオットは、研究が専門。男漁りにも積極的で、コカインの常習犯。
2人で1つの運命共同体であり、同じアパートで暮らしている。
出産センターとラボを持つのが2人の夢だ。

現場では順調な出産の影で、死産や母体の死。不妊などの様々な問題が発生している。
ビヴァは人口受精による何度目かの流産。
女優のジェネヴィーヴが病院を訪れ、子宮が特異な形だと分かる。妊活に。
エリがジェネを口説き、ビヴァが入れ替わって恋愛関係に。

姉妹は投資家でレズビアンのレベッカと会食。
あらかじめ提供した資料では満足していない様子。
そこでビヴァが機転を利かせる。
「女性が完璧な存在になるために、旧態依然としたシステムを変えたいのです」
ビヴァが赤ちゃんのため、のような偽善ではなく、人類の進化のためだと訴えると、レベッカの心に響いたのか、投資を検討してくれるらしい。

ビヴァがジェネとの進捗状況を喋らないから、エリの機嫌が悪い。

👭〈EP.02〉🕯️🍾
姉妹は出資者の食事会に招待され。オピオイドの火付け役の娘(レベッカ)、ウェルネス事業の運営者、中国人でVR医療の開発者など、大勢の資産家と会食する。

ビヴァの偽善的な理想論に出資者たちは飽きあき。
そこで姉のエリが介入。現状は違法とされている提案が2つ紹介される。
更年期を永久に抑制する方法について。20代に卵巣組織を採取し、40代前半に移植。それを毎年つづければ若さが継続できる。
もう1つは、
「受精卵を胎芽(胎児の初期)になるまでゼロから育てられれば、あとは思いのままにできる」

会食を終え、ビヴァは部屋でジェネに電話をかけ、就寝しようとするが。サイレンが。
慌てて廊下に出ると、姉のエリに布を被せられ、腕を縛られて地下室に監禁。

ビヴァが右往左往している間にエリはVRの中国人を誘惑。通訳が部屋を出て行こうとすると、見ているように引き留めた。バックで1つに。煌々とした明かりの下で目合う2人に通訳は超勃起。自慰しようするから「触らないで」と命令した。

ビヴァは自力でロープを解いた。配管がうねくる通路を抜け、喚起口から脱出すると、レベッカたちが庭で待っていた。「敗者だ」と笑って馬鹿にする。富裕層の集団による悪質な苛めに、姉が加担していたのが分かった。
ビヴァはブチ切れ。出資者一人ひとりを「人間性が著しく損なわれた獣だっ!」とののしり、エリをプールに突き飛ばした。

姉妹は出資者たちの通過儀礼に合格。
レベッカから、マンハッタンに出産センターとラボを創ることが約束された。

🍽️夕食を囲む富裕層の雑談。アンチエイジングは女性に聞くにかぎる。
受けと責めが目まぐるしく入れ替わって気持ちよかった。

👭〈EP.03〉🧫🔬
マントル・パーカー出産センターと、その内部にあるラボがスタート。
すでに更年期を迎えた女性からの質問に対して「40代で卵巣組織を採取しておけば、5年程度は遅らせられる」と回答するエリ。
「24才の女性の卵巣組織を私に移植したらどうなるの?」
「とても興味深い。今後の研究テーマです」

ビヴァと恋人のジェネが旅行。1人になったエリは面白くない。
ラボに戻り、ビヴァの卵子に同僚のトムの精子を受精させる。
夜。エリは自宅でパーティを開いて深酒。バルコニーから物を落としてストレスを発散していると、ホームレスで年上の女性、アグネスと口論に。
アグネスが部屋に来て物を壊しはじめて、パーティはお開きに。

2人は意気投合して、バルコニーでコカイン。
アグネスはエリを「妹に寄生して死ぬだけの哀れなジャンキー」とののしる。
エリは衝動的にアグネスを突き落としてしまう。

エリがパニックで地上を捜索するも、死体は見つからず。
家にもどってビヴァに電話すると緊張の糸が途切れて気絶。
気がつくと朝で、自分のベッドでの目覚め。旅行から舞い戻ったビヴァが隣に寄り添って看病。グレタが朝食の準備をしてくれていた。

👭〈EP.04〉🥂🎂
姉妹の両親が訪ねてきて、出産センターを案内する。
ビヴァは、恋人のジェネを紹介。
エリは奇功が目立つように。

ビヴァは人工授精で8週目だとエリに打ち明けた。最長記録に。エリは内緒にされていたので動揺する。さらに、ビヴァの「ありがとう」がジェネに向けられていて気が狂いそう。
「欲しいものが全て手に入って何よりよ」

精子はジェネの弟、サミーのものを使用したと明かされる。
ビヴァがジェネと暮らすために家を出ることが伝えられた。
エリが内緒で培養中だったラボの受精卵も行き場を無くしてしまう。

エリは子持ちの政治家と恋愛関係に。
姉妹の誕生日を家族で祝うが、下世話なエリにジェネが怒って口論。
ついにエリの苛立ちが沸点に達し、
「私の人生はすべて貴方のためだった」とビヴァに本音。
両親に内緒にしていた妹の妊娠。それから、最初にジェネを誘ったのが妹の振りをしたエリだったと暴露された。
「黙れ!」と父のアランが怒鳴った。

エコー検査でビヴァのお腹の子が双子だと分かる。
ラボでエリが育てている体外受精の胎児は、順調に育って58日目に。

👰‍♀️結婚の大変さ。
結婚したい人の姉がメンヘラで幸福を妨害してくる。
結婚は赤の他人と親戚になる行為なので、陥りがちな苦難。
相手の家族に迷惑がかかるから、と結婚を諦めるパターンもあるだろう。

たとえば「菩薩のような心」と言うと聞こえはいいが、とんでもない相手を連れてくる確立が上がるので、いい子に恵まれた場合は危険を覚悟しないといけない、という逆転現象が起きる。
マウンティングに必死で、孤立した集団と親戚になると、それまで平穏だったイベントも、お通夜か怪獣ショーに生まれ変わる。

👭〈EP.05〉✈️✂️
投資家のレベッカが所有するプライベートジェットに乗り、姉妹は分院の開設式にアラバマ州へ。
記者のサンライスが、姉妹に密着取材。ステマするようにレベッカに雇われた人物だ。
出産センターの開設から3ヶ月が経過。ビヴァのお腹の子は順調に育っていた。姉妹は2人で双子の面倒を見るつもりでいる。

パーカー家の屋敷に到着。レベッカのパートナーであるスーザンの案内で、レベッカの父、マリオン。それから祖母と姉妹を紹介される。
娘のフローレンスは4つ子を妊娠中。

新しいセンターで出産の日を迎えた。
マリオンは元外科医。
帝王切開になるが、マリオンも娘の腹にメスを入れて参加する。
普段はラボにこもっているエリの手によって、つぎつぎ取り上げられてゆく赤ん坊。
無事に4人の出産に成功するが、祝福される赤ん坊を見ていたエリは嫉妬の気持ちが芽生えて、無意識にハサミをぐりぐり。フローレスの膀胱が傷ついて血しぶきがほとばしった。

回想では、エリの患者が破水して流産。4週間育てた胎芽を子宮に戻したことが原因だと分かる。
一方、姉妹の自宅のあるアパートでは。雨どいに引っかかっていた、アグネスの死体が警察によって発見される。
ラリったエリが口を滑らせ、インタビューしていたサンライスによる通報だった。

サンライスは、エリのラボでの実験の大半が妄想の産物にすぎず。
それどころか、ビヴァが女優ジェネに恋したのも演技では? と指摘する。
エリは病院から追放され、ビヴァは縁を切るはめに。姉妹の記事が書けなくなったので、サンライスも解雇さたが、独自に暴露記事を書きはじめた。

👭〈EP.06〉👩🏿‍🍼👩🏼‍🍼
ビヴァが運営する出産センターは顧客の満足度も高くて盛況。第三、第四の分院も計画中。
出資者たちとの夕食会で、サイラスが姉妹の暴露記事を予定していることが伝えられる。
隠蔽不可能なほどのあらゆるエリの悪事が語られ。
ビヴァは、エリを告発するように指示された。

カルロヴィッチ賞の授賞式。ビヴァは舞台に立ち、迷ったものの、報道陣の前でエリとの絶縁を宣言。クリーンで安全な場所を目指すとスピーチした。

エリの荒れ果てた秘密のラボで姉妹は再会を果たした。抱き合って互いを求めるが、ビヴァは、水槽のような人工子宮の中で育っている双子の胎児を発見してしまう。
「美しいわ」
赤ちゃんも地位も手に入れたけど幸せになれない。
私はまるでボートから落ちて水の中にいるかのよう。
空気を求め、光をさがし続けている。
「それが貴方よ」
私が息をするには、貴方が必要なの。
私が貴方の中に入り、1つになる。
「貴方が理想の私」

エリは、手術台のビヴァを麻酔で眠らせ、受け取ったゴムで髪を結った。
それから自分の下腹をメスで切り、糸で縫合してゆく。さらにマタニティドレスを着用。
今度はビヴァの腹を切って帝王切開に。2人の胎児をほじくり出してゆく。

産声を上げる赤ちゃん。臍の緒を切り、腹を裂かれたまま出血するビヴァを残し、双子を抱いてラボを出てゆく。
出産センターで働く医師たちに助けを求め、双子をたくすと、エリは腹の縫合箇所から血を流しながら気絶した。

ビヴァと入れ替わったエリは「姉は出産を手伝ってから姿を消した」と嘘をついたが、レベッカたちは疑いもせず、出産を祝ってくれた。
産まれたばかりの双子は透明のクベースの中で順調に息づいていた。

それから時は流れ。ビヴァになりすましたエリはパートナーのジェネと共にベビーカーを押し、公園のベンチで一休み。
ジョギング中だった女性に話しかけられるが知らない顔だ。
2年前に自助グループの席で姉の死について相談したらしいが、身に覚えがない。
ビヴァを殺すより以前の話だ。
エリは次第に記憶があいまいになり、自分が姉なのか妹なのか分からなくなっていた。


【ドラマを振り返って】🖼️🛌🏼
姉がすべてを手に入れた妹を殺害してすり替わる落ち。
縫合する際に、出産の痕跡がないから、妊婦ではないと気づくはずだが……。

妹が自助グループに参加しているのが2年前。妹も生前から姉が亡くなる妄想に取り憑かれていたことになる。

そう思い込んでいるだけで、実際は姉(光)になったと思い込んでいる妹(影)なのかも。
(台詞がない落ちは視聴者の好きに想像できるので余韻が残る)

🙍🏿‍♀️気になる脇役。
[グレタ]
家政婦なのだが、お洒落。毎回登場するたび髪型と衣装が違っていて、ファッションモデルのよう。
ミステリアスな人物をイメージしているのだろうが、女性らしい遊び心があって面白い。

姉妹が使用した物を収集しているのだが、アートにするためだったと分かって絶句。
母を死なせた若い女医を探しているらしいが、それ以上は掘り下げず。消化不良だった。

[ジェネヴィーヴ]
女優。
この人とのやり取りの空虚さがとくに気になる。
笑顔で仲良くするか、じっと見て不満を言うだけ。職業の特徴も、人間味をまるで感じない。
作家の他人への興味の欠如を疑うほど人形的な彼女だった。

👑自己表現。
産婦人科の勉強と、心象世界の映像化に終始していたのが残念。
嫉妬、破壊、苛め、支配、女王気質、いちゃいちゃ、姉妹愛、立場逆転。“監督の心の中”を表現しているだけで、その先がない。
趣味の範囲に収まっていて、創作への熱情が感じられなかった。
(同じような趣味で、残酷なものに心惹かれる人にはいいだろう)

評論家とアラスジを書いている人の評価が高く、6話で手軽なので迷いなく突入したが、あまり高くない一般の評価に近い印象だった。
なぜこの脚本がドラマ化までいけたのか謎。選んでいる人が女性を応援しているのか、それとも、姉妹の問題に強く心惹かれたのか。
同じ言葉が繰り返される場面が多く、展開力に欠けた。
(まあ、贅沢を言わなければ、テレビシリーズで有り勝ちなので、許容範囲ではある)

重要な最初と最後のエピソードの弱さも気になる。
EP01を見返すと、姉妹の言動にあまり違いがなく、最初から区別がつかないようにする、難しいことにチャレンジしているのが分かる。

その分、EP02、03、04は脚本家たちの普段考えていることが気軽に書かれている。現場の人たちの雑談を聞いているようで楽しめた。
だらだらしていて、1話が1時間の長すぎる構成との相性もよかった。

ショーランナーのバーチは、まとめ役としては優れているので、他と同様、共同脚本にした方がいい、とは思った。
ただ、最初と最後を華麗に仕上げてこそのリーダーではある。
(現状で妥協するのが丸いのか)

インタビューを読むと、主演のレイチェル・ワイズが原作のファンで、バーチに依頼したらしい。
(ラノベの編集者じゃあるまいし、無理あるわ)
だったら、キャラやイベントが弱いのは仕方ない。むしろ潔く仕事を受けたバーチの男気を称賛したい。

👥分裂不安症。
姉のエリオットが快楽主義者のマッド・サイエンティストで、妹のビヴァリーが道徳担当。
姉は妹の手を焼いている時が充足していて、手を離れると苛立ち、平常でいられない。

新鮮味のないテーマではあるが、妹に嫉妬する姉の姿は『BEEF』の兄弟とも重なるので、コロナ禍での社会の関心事なのかもしれない。

嫉妬と愛着が描かれているが、一方で妹は姉に憧れてもいる。地味で常識に囚われた妹が現実で、思い描く理想の自分が姉のようでもある。
両方の視点から描かれていて、広がりがあって楽しめた。

姉妹の愛情と憎しみが時間をかけて丁寧に描かれていて、うっとり。
思い通りにならずにすれ違う様がもどかしい。

時代の流れと、作り手が女性主導もあって出産関連が深みを増している。
落ちも原作より好きだし、性別反転してリメイクするには打って付けの題材。
人工子宮の映像化も無理なくドラマ内に消化されていて魅力的だった。
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