日下勉

OZU ~小津安二郎が描いた物語~の日下勉のレビュー・感想・評価

4.5
小津安二郎の戦前の作品、6作品を現代に翻案して、気鋭の映像作家たちが作り出す小津安二郎の世界。
といっても小津安二郎をそのままリメイクするのではなく、それぞれの味付けがとても素晴らしい。ただ風にそよぐ洗濯物とか、空に漂いつつ上って行く風船、赤いケトルなど随所に小津安二郎へのオマージュがあり、そこを見つけるのも楽しい。
小津安二郎の中でもっともナンセンスギャグが際立つ「淑女と髭」は普段見ることの出来ない成田凌のオーバーアクトも楽しいし、「非常線の女」の高良健吾の暗いノワールな雰囲気も良かった。「生まれてはみたけれど」「出来ごころ」はちょっと現代への翻案が少しこなれていないところが、若干引っ掛かるところだけど、十分面白い。特に「出来ごころ」の城定秀夫が一番小津安二郎の匂いのする演出がされていて流石。
これらの中でも突出して気に入ったのは5話目の「東京の女」6話目の「青春の夢いまいづこ」
「東京の女」は金子大地のナイーブなシスコンぶりが、彼のキャラクターによくあっていて、最後の悲劇的な結末への説得力は十分。
「青春の夢いまいづこ」のかつて友人として互いに気心の知れない間柄であった中川大志と渡辺大知が年を経て関係が変化し、それでもサッカーボールを2人で追うラストのちょっと苦みがありつつ、心地好さも感じるラストはとても良かった。
それにしてもカメがあんなに大きくなるのに気がつかない可笑しさは、ご愛敬。
日下勉

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