シガーandシュガー

ウェールズ連続少女殺人事件~30年目の真実のシガーandシュガーのレビュー・感想・評価

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30年前の未解決事件を、現在の捜査技術で解明しようと当時の担当者がたったの三名(うち一人は当時を知らない若手)でチームを組む。
予算も時間も限られる中、容疑者となりうる200名超えのDNAにも該当者がなかったり、対象者に協力を拒まれたり、捜査上の困難は時代が変わっても形を変えて捜査官を苦しめる。

現在と30年前を行き来して描写し、捜査を仕切るポールの過去も描かれる。
ポールが仕事の虫で妻の理解の上に家庭が成り立っていたことや、仕事に対して真摯であろうとしていたこと、少女連続殺害事件の解決が出来なかったことをずっと悔やんでいたことなどが話を追うごとにわかってきて心にしみるものがある。
中でも、昔のポールはまだ希望に満ちていて、当時の上司には「出世する」などと言われてもいたことがわかるが、現在は警部補と名乗っていたように思うので警察官の多くがたどり着くというところまでの出世だったのだろうと想像するとさらに切ない。

全体的に抑えめのトーンで話しが進み、俳優陣も地味なことからテンポに乗るまで退屈だった。
キャラクターもなんとなくわかってきて捜査もなんとなく進み始め、過去の古傷を多くの住民が思い出すあたりくらいから面白くなってくる。
肝心のDNAがなかなか決め手にならないところにリアルさがあった。おおよそ一致、ではだめで、確信を求めてとことんまでDNAを求めたポールにちょっと感動する。上に反抗しきれない姿も見ていたし、実際にあった事件だと思えばこの思い切ったDNA採取はなかなかドラマチックだったと思う。

このドラマのもととなった事件は検索できなかったけれど1970年代のことらしい。DNAが犯罪捜査で決め手とされるようになったのは、イギリスでは1986年のことだそうで(コード・オブ・キラーというドラマになった。これも大変な労力で捜査していた)、10年程度で再捜査をしていたら、もしかしたら犯人を生きながらに罰することができたのかもしれない。できなかったかもしれない。
結果はどうであれ、巡ってきたものには全力で立ち向かうしかないのだな、と、ラストのポール警部補の姿を見て感じた。