リプリー

イアリー 見えない顔のリプリーのレビュー・感想・評価

イアリー 見えない顔(2018年製作のドラマ)
3.9
他人のゴミを入念にチェックする向かいの住人、謎の変死体、突然の自殺者、異常なまでの監視カメラの数、大学内での激しい権力争い、そして謎の新興宗教…。
前川裕氏による同名小説の映像化。
原作は確か、新大阪の駅で購入し、新幹線の移動中にサクサクと読んだ記憶がある。何せ結構前のことだし、あまりにスラスラと読み過ぎて、かなり記憶が曖昧。
がゆえにこのドラマを見始めて「あれ?原作こんなに複雑な話だっけ…」と言うのが妙なノイズになってしまった。
もちろん大枠の設定など一緒な部分もあるが、かなり大胆にドラマ用にアレンジされている。
そしてそのオリジナルの部分がドラマとしてかなり面白い。
原作にある前川裕さん特有の性的な(性犯罪的な)ものは鳴りを潜め、登場人物の思惑が錯綜する奇妙なサスペンスの色合いが強くなっている。
もちろん、サブエピソードがあくまでサブとしてしか機能していない(単体としては面白いのだが)部分もあって、特に山田杏奈の学校で巻き起こるイジメのエピソードは、やや取って付けたような気もする。あとあの男子学生の軽い感じが、イジメものとしてさすがに腑に落ちない……なんて思っていたが、ラストに大きなひっくり返しがある。
そしてそれは、原作とは離れた作り手からの強烈なメッセージに感じた。
人が人を統べるということ、人を救うということ、必要悪という都合のいい言葉。
この世は生きるに値するのか、人は信用する価値があるのか。
少し露悪的ではあるが、なかなか興味深く感じた。