エニグマ

不適切にもほどがある!のエニグマのレビュー・感想・評価

不適切にもほどがある!(2024年製作のドラマ)
4.4
昭和の熱血教師小川が令和にタイムスリップし、2つの時代を通してコンプライアンスに切り込んでいく話。
阿部サダヲや古田新太、三宅弘城などクドカン常連組はもちろんのこと、仲里依紗や錦戸亮、岡田将生など過去作の主役級のキャストも名を連ねるという豪華さ。(そして小泉今日子も!!)そして磯村勇斗や河合優実といった実力派の若手も出演。特に河合優実はシネフィルには馴染み深い女優さんだが、満を持して地上波ドラマでもその演技力を見せつける。中島歩も出ているし世のシネフィル的にも嬉しいキャスティングのはずだ。磯村勇斗も一人二役を見事にこなしていた。「ムッチでーす」が頭から離れない。
本作はあらすじの通り、昭和の価値観から令和のコンプライアンスを斬ると言ったもの。と言いつつ昭和生まれの小川の価値観はぶっ飛んでおり、正しい訳では無い。昭和のダメなところと令和の行き過ぎている所を考慮し合い、折衷案的な結論を毎回小川達が出すのである。しかしそれがその問題の最適解かというとそうでは無い。SNSで割と否定的な意見を述べる人は割とこのドラマ内での結論を真に受けてしまっている人かもしれない。この結論はあくまで(昭和の人間も含めた)彼らの結論であり、ドラマ的にはあくまでも問題提起で「彼らはこう考えましたがあなたならどう考えますか?」と言った意味合いに私は思える。それに(言い換えれば逃げとも取れるが)最終回では「2024年に合わせた表現をしています」と粋なテロップを出していた。つまり、このドラマも未来から見れば遅れた不適切な話かもしれないということだ。だからそこまで視聴者はこのドラマのアンサーを真に受けるべきでは無い。
毎話挿入されるミュージカルシーンはいささか合ってないようにも感じるが、会話劇にメリハリをつけるという意味では良いのか。終盤の妊活問題だけはどうしても腑に落ちなくて、取り上げるだけ取り上げておざなりにした感じがする。結局本人達次第ですよと言われればそれまでだが、最終回のシナリオとしてはどうなのだろうか。思えば途中からテレビ局側のお仕事ドラマになったりと割と軸はブレブレだったので、主題が霞んだ感じなのは否めない。ただ、クドカン特有の小ネタが多く笑えたのでドラマとしては楽しめた。1番好きな回は岡田将生回である。純子の前に白馬の王子様の如く登場した彼だが、直近にゴールドボーイを見たためどうしても実はクズ男という推測が頭を離れなかった。しかし蓋を開けてみれば優男の方の岡田将生だったので良かった。
個人的にはもっとタイムマシンを活用してパラドックスとかの時間要素を全面に出して欲しかった。割と簡単に過去と現在を行き来してたし。でもクドカンドラマもまた別のフェーズに入ってきた気がして今後が楽しみ。
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