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お願いメシ神さまのtamashiiのレビュー・感想・評価

お願いメシ神さま(2023年製作のドラマ)
3.4
正気なところ、麻倉ももファン以外には全くウケないと思われる。もちょファンなら飯神様から何を与えられても喜んでしまうので鋭い評価は期待できない。私はどちらかと言えば後者の人間である。だが、僅かに残った理性が何か大事なことを伝えようとしていたようなのでここに記す次第である。

オーディションで役を決めたとはとても思えないので、企画段階から麻倉ももありきで制作しているはずだ。なのに、おそらく脚本家も監督も大して麻倉ももに興味がないことが根本的な問題である。かといって作家としての個性みたいなものも全く感じられないので、ミューレから企画・出資の話が出て、依頼されたら仕事として作りますよ的な感じだったのではないかと薄ぼんやり勘繰ってみたりする。放送事故的な感じはないが、もちょの美顔や一挙手一投足に喜びを感じるような人しか楽しめないんじゃないかと思うほどには作品として何も引っ掛かりがない。

グルメ系の一人芝居ドラマなので、否応なく注目することになるのが声優麻倉ももの実写演技である。意外にも表情の演技が結構できていて驚いた。そこだけ集中的に指導されたのかもしれないし、もちょの人物像を考えると指導なしの地力だったとしてもおかしくはない。店員とのやりとりなどの日常的会話も割と力が抜けていて芝居のセンスが垣間見えるが、安定感がないので探り探りだったことが推察される。

問題の心の声パートが酷く感じるのは、台本上の台詞と演出がダサすぎるからで、麻倉ももの演技力だけのせいではないと思う。正直、声優として演技の幅が広い方ではないと思うが、特別下手ではないし、決して棒読み系の声優ではない。それでも酷く感じるのは、おそらくだけど、アニメみたいに絵コンテに合わせて声を収録したのではなく、映像と朗読を別々に録っておいて後で合わせたからではないか。テンション感やテンポ感がギャグとして成立していないのは、役者より制作側の責任が重いと思う。というか、麻倉ももありきなんだから、もちょが言ってウケそうな台詞で当て書きしろよな。このあたりのパートの出来栄えの低さは、『おいしい給食』の市原隼人などと比べると際立つ。もちろん、あれと比べるのはいろいろな意味で酷というものだが、心の声でもかなり面白くできるという実例として参考になるはず。

個人的なことを言えば、トラセ沼に足湯くらいは浸かって数年なので、けっこう楽しめた。しかし、惜しいことをしたという残念感も強かった。麻倉もものことをある程度知っていると、企画自体はものすごく良いものに思える。外見は幼い感じで可愛い系に見えるが、ダンスの飲み込みがよく意外と運動のセンスがあったり、妖刀と称されるほどトークには毒があったり、貯金が趣味と言うほど生活のセンスは堅実だったり、その割には少女漫画が趣味で割とディープな作品も読み漁っていたりと、もちょの相反する多面的人間性はこれまで多くのファンに愛されてきたし、そして何より美味しい食べ物に目がないということはファンならば誰しもが知る事実である。こうした要素は本作にかなり反映されているので、麻倉もも本人のことを少し知っていれば本作が麻倉もものプロモーションドラマとして企画されたのだろうことが容易に想像できてしまう。

しかし、プロモーションドラマがすべからくつまらないとは限らないはずだ。こんなに面白い人を主人公にグルメドラマを作るなら、独立した作品として面白いものになってもおかしくなかったはずだ。

一つの方向性として、もっと実際のもちょに寄せたドラマにして、もちょの自然なリアクションを強調した方が、もちょファンはもとより多くの人が楽しめる作品になったのではないか。食べ物同士の掛け合いを妄想して声を当てるなどという、漫画家という設定と声優の特性を活かしました的な超絶寒い展開は作品の魅力には全然ならないので全部カットしていい。そんな空虚な面白さは麻倉ももの魅力と合わないからである。いっそのこと食事中は基本台詞ナシにして、美味しい食べ物を無言で頬張る麻倉ももの色んな表情と「おいしー」という呟きを垂れ流すだけの方が魅力的なドラマになった気さえする。少なくとももちょファンは麻倉ももが一人でご飯食べる様子を凄く見たいはず。製作陣はセカショとミリラジの会員になるところから研究し直した方がいい。

まぁ色々書いたが、もちょ可愛かったよね。ありがたや……これからも供給欲しいですお願いします🙏
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