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マンハント 〜リンカーン暗殺犯を追え〜のBlueのレビュー・感想・評価

4.0

このドラマを見る前に、少し歴史的背景を知っておくとより面白く理解を深められると思うので、ざっくりと書くと、南米を植民地化したスペインやポルトガルは金や銀などを強奪して世界の覇権を握ろうとします。
それに対して北米をイギリス、フランス、オランダなど植民地化していきますが、金や銀は産出されず、自分達で事業起こしていくしかありませんでした。
北米の北部を中心に侵略をし始めてやがて南部まで多くのヨーロッパの人々が住むようになりますが、北部では事業を起こして企業化が進み工業が発展していきます。
それに対して南部は温暖な気候でタバコ産業を中心に農業が発展していきます。

北部では工業が発展していくとより多くの人々に日常で製品を使って欲しいので、国際的にも奴隷化に対する非難もあるし、奴隷に人権を与える事で、安定した労働力の確保と製品を買う市場をさらに拡大していく狙いがありました。
もちろん黒人にも平等な権利を、という理想は掲げられてはいましたが、実際は1950年の公民権運動まで人権意識、賃金格差ほか、全てにおいて区別と差別は明確にあったので、この当時の平等意識はほとんど口実だけだった、という認識は差別される側からすると強くあったと思います。

そして南部は農業が盛んでしたから、安い賃金で雇用できる奴隷制度を撤廃というのは、人海戦術で農園を切り拓いてきた農業にとって大きなダメージがあって、根強い反発があり、それが発端で戦争に発展していきます。

戦争は南部がかなり優勢に進めていたのですが、最終的には北部が勝つ事で決着がつきます。その後の出来事がこのリンカーン暗殺となります。
ここさえおさえておけば面白く見れると思います。
脚本がしっかりとしていてドラマの進め方、テンポも良かったし、逃走する犯人と追う者たちの展開はサスペンスドラマとしてもよくできていたし、犯人を捕まえ南部の組織の仕業とわかるとまた戦争に発展しかねないという実際の政治劇も実に目をひかれました。
また当時は舞台俳優や作家がスターの位置でしたから、南部につくか、北部につくかで人生が変わってしまうという点も興味深いところでした。

欲を言えばもう2話くらい制作して欲しかったです。テンポは遅くなるとはいえ、黒人が証言台に立つ事自体が許されないとリンチを受けたりする可能性は高いので、そういう苦しさをもっと描いて欲しかったし、小説でもAmazonプライムでも見れる名作、地下鉄道のように問題は地続きである、という結末と同じようにした方がこのドラマはより印象に残ったと思います。

あとリンカーンと主人公の友情を元に執念で捜査をしていたけど、ちょっとそれだけでは説得力に欠けるというか、陸軍の長官として犠牲が多大だった分、南部に対して目の仇にしたところはあったと思うので、その視点からもっと描いて欲しかったと思いました。

一方でこれは仕方ないのですが、この時代は皆同じような服装、髪型、ヒゲヅラで見分けがなかなかつかなく、ちょっと戸惑いました。一週間1話配信だったけど、一週間経つと人と名前が一致しなかったりして、正直Netflixのように一挙配信してくれれば良かった気がしました。

個人的にザッと感想を書いてきましたが、充分に見応えがある作品だと思うし、オススメです。
Appleはマーティンスコセッシのキラーズオブザフラワームーンやこのマンハント、そしてベンジャミンフランクリンのドラマを配信するなど、2024年現在、大統領選を意識した作品を連発しています。動画配信サービスをしている会社は、アメリカの未来や過去を描いたドラマや映画を作品を昨年から配信していますが、その点でもこのマンハントは個人的に見るべき作品の一本ではないか、と思います。
興味深く、面白い作品でした。
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