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生きとし生けるもののmikiのネタバレレビュー・内容・結末

生きとし生けるもの(2024年製作のドラマ)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

先日、まだ60代という若さで
母が息を引き取りました。

6年前に卵巣癌がステージIII Cの
状態で発見され、
その後何度も
手術と抗がん剤を繰り返し、
頑張って治療してくれました。

母が頑張ってくれたお陰で
国内外色々なところに旅行したり、
お出かけすることができました。

6年間も治療を頑張ってくれた母に
心から感謝しています。
私達を産んでくれて、
育ててくれて、
癌になる前もなった後も
たくさんの素晴らしい思い出をくれて、
感謝してもしきれません。



母は最期は家族全員に見守られ
自宅にて安らかに
息を引き取りました。




その後テレ東WBSにて
本作品の存在を知り、
録画していました。



5/12の母の日に
本作品を見ました。

実際に癌終末期の患者を
在宅で看護・介護した身としては、
あまりにも本作品が現実と
異なるであろう部分が多く、
なかなか受け入れられませんでした…





まず余命3ヶ月の癌患者が
あんなに元気に動けるとは
思えません。

母も癌が進行するにつれて
様々な合併症・病気を引き起こし、
余命1年を宣言された時点で
体力もなく
自立歩行も困難になり、
通院以外に1回も外出が
できませんでした。




また本作に介護の要素も
入れて頂きたかったです。
本作のようなテーマの作品を
民放で放送することは
とてつもなく大きな意義が
あると思いますので、
感謝しています。

しかし、現実として
終末期の患者さんは
介護を受ける方が多いと思いますので、
しっかりと介護についても
取り入れて頂きたかったです。

介護は本当に大変でした。

介護の有無により
患者も家族もまた、
色々と気持ちが移りゆくことは
あると思います。


また、渡辺謙さんが廃校で倒れ、
その後すぐにペンションのベッドで
横になるシーンに切り替わりますが、
これも違和感がありました。
(細かくてすみません)

患者を移動させるのも
本当に大変です。
介護タクシーも使ったこともあり、
移動の大変さを知っている身としては
そういう現実も
描いて欲しかったです。



また、最期は笑いません。
終末期の患者さんのほとんどは
最期は酸素マスクを付け、
麻薬で意識レベルが低下しており、
眠っているような状態だと思います。
笑うことなんてできません。




他にもたくさんの
つっこみどころがありました。
ただ一緒に本作品を鑑賞してくれた
主人は「ドラマだからね、
特に医療ドラマは現実とは
異なる部分が多いよね。
ドクターXなんて現実あり得ないしね。
それよりもこういうテーマの
ドラマはあまり見たことがないよね」
と言っていました。

確かにこのようなテーマの作品を
民放が放送して下さり、
本当に感謝しています。


今は長寿化の影響で
日本人2人に1人が
癌になると言われています。

私は母が終末期に突入したときに、
はじめて終末期が
どういうものか、
患者はどういう経緯を辿るか、
医療者向け終末期ガイドブックを
読んだことで
はじめて知りました。


医者である兄弟
(専門は外科でも内科でも
緩和ケアでもありません)も、
終末期について
よく分かっていませんでした。


(母は施設には入らずに
最期まで在宅でしたが)
緩和ケア病棟・ホスピスに入ると
高カロリー輸液は
基本的にはしなくなり、
最終的に患者の体重は
30kg台になることも多く、
骨と皮の別人になってしまうこと。

そのようなことも
医者の兄弟も含め、
全員知りませんでした。


日本人の2人に1人が
癌になる時代。
治療を続ければ訪れる終末期。
この終末期医療についても
もっと知っておく方が良いと
個人的には思いました。

その方がいざ大事な方が
癌になった際に
色んな心の準備が
できると思うからです。



実際、私はもっと早くから
終末期について
勉強しておくべきだったと
思っています。

日本としても
もう少しだけ終末期について
オープンに話せる、
緩和ケアや安楽死の話題が
禁忌・タブーではない、
そんな国になれば、
大事な人との時間を
もっともっと大切にできる人が
増えるのでは
ないかなと思いました。


ですので民放で本作品を
放送してくれたことに
改めて感謝申し上げます。







以下は鑑賞して思ったことになります。

渡辺謙さんが
「体調どう?」と聞かれたとき
「まぁまぁかな」
と言っているのを見て、
あぁ、母も毎回
「まぁまぁかな」
と言っていたなぁと思いました。

たぶん、しんどかったと思います。
なので「大丈夫」とは言えない。
でも「辛い」と言うと
みんなにすごく心配させてしまう。
ちょうど良い言葉として
母は「まぁまぁ」
と言っていたのかなぁと…





他にもよく映画でも本でも
「生きろ」
とは言われますが、
なぜ生きなくては
ならないのか?
それは「生まれたから」
生まれたからには、生きろ。
というのも
何となく腑に落ちました。





また、渡辺謙さんも
命を灯火に例えていましたが、
終末期の母は
本当に消え入りそうな
命の灯火に見えました。
いつ消えてしまっても
おかしくない命の灯火。
兄弟ともそういう話をしました。

ただ、母は渡辺謙さんと違い、
「死ぬのは怖くない」
と言っていました。
「それよりもなるべく
楽に苦しくなく逝きたい。
それが願い」
と言っていました。

死ぬのが怖いとすら思わなくなった
というのは、
終末期の体の状態が
本当に本当に辛かったんだと思います。

ただ母は幸せだと言って
くれていました。

なぜならば初孫に会えたからです。

母が亡くなる半年程前に
待望の初孫が産まれました。

母にとって初孫を抱く
というのは生きる希望でした。
孫がギャン泣きしている声すら
可愛く、愛おしいと言っていました。


妻夫木聡さんのお母さんとは異なり、
母は最期の数ヶ月、
初孫を抱けて幸せだと、
言ってくれていました。


人間は皆1人1人
生き方も死に方も違います。
ただ渡辺謙さんのように
「この世界は美しい。
良い人生だった」
と思える方が1人でも増え、
願わくば全世界の方が
そう思って命の灯火を
終わりにしてほしい。
もちろん私もです。

ですので自身を、
私の周りの方々を、
社会を、
少しでも良くできるように
私も頑張って
1日、1日生きていこうと思いました。








本作品は
現実と違うと色々と言ってしまい、
すみませんでした。

本作品を作って下さり、
本当にありがとうございました。
miki

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