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私のトナカイちゃんのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

私のトナカイちゃん(2024年製作のドラマ)
4.3
『私のトナカイちゃん』は、クリエイターのリチャード・ガッドが自らの体験を基にした戯曲を原作とした作品で、自宅に現れ何千通ものメッセージを送ってきた女性ストーカーとの格闘を描いている。
彼自身は、このドラマについて次のように書いている。
「男性がストーカー被害に遭う体験は、映画やテレビではセクシーなものとして描かれがちだ。徐々に不気味さを増していく魔性の女のように、身体的な暴力の脅威はさほど大きなものではない。しかし、彼女が仮にナイフを持っていたとしたらと考えると肉体的な恐怖を感じた。彼女が背の高い怖い男だったらどんなに恐ろしいだろうとも考えた」
売れないコメディアンのドニー・ダン(リチャード・ガッド)は、バーテンダーをやっている時に、「財布を忘れた」と言う自称弁護士のマーサに紅茶を奢った。
それから、ドニーはマーサに執拗に付き纏われる。
ドニーとマーサは、肥大した承認欲求と満たされない現実への苛立ちそして切実に愛を求めているという共通点で共感したが、マーサの貪欲に愛を求める狂気が次第にドニーを追い詰めていく展開が、実話ならではのリアリティで描かれていて背筋が凍る。
ドニーが、トランスジェンダーの彼女がいる理由や家族にも言えない暗い過去、何よりなぜマーサからの脅迫電話を警察に通報出来なかった理由の根深さに、古き良きマッチョな価値観の病や性被害者の後ろめたさやトラウマが闇深い。
後を引くラストも最高な実話クライムドラマ。
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