tanzi

ダウントン・アビー シーズン2のtanziのレビュー・感想・評価

4.4
前シーズン1で最も印象に残った台詞は、クローリー家当主ロバートの「私はここの相続人ではなく、管理人なのだ」という言葉。

多分それが通底する哲学のひとつなんだろう。

そういえば、映画『タイタニック』の主役ローズも最初は英国貴族ながら家の存続のためにアメリカの富豪に嫁ぐ役回りだった。クローリー家のように家の財産を守るためにアメリカの富豪の娘を嫁に迎える(ローズのようにその反対もあり)事は当時多く行われていたと聞く。

そんな伯爵家と使用人、コイツは邪悪だと思うキャラも数が絞られており、清濁あわせもちながら概ね善意の人が多いので拍子抜けするほど。

クローリー家も姉妹の確執などあったものの機能不全とまではいかず、事が起これば家族が団結して使用人からも深く愛されているのが親切設計。
なんといっても、当主ロバートが上流階級の良い部分を前面に出した紳士なのが大きく、父親ってその家を決めるよねとあらためて感じる。

近代が舞台でまたキリスト教徒である事が大きな要因だけど、一夫一妻制でありまた使用人と雇い主は形式上法的に雇用関係として認められているのが安心できる。

中国の歴史ドラマだと身分制度に加え、一夫多妻で上流階級だとひとつ屋根の下に側女が何人もおり嫡子だの庶子だのと容赦ない上、戸籍制度も絡み合い相関関係や感情も複雑。

ダウントンアビーでは使用人の口からすら「権利」という言葉が何度も出てくるのも新鮮。
女性にまだ参政権もないが、第一次世界大戦を経て社会に止めようのない激しい変革があったことを劇的に伝えてくる脚本はお見事です。

また、仕切り屋のイザベル・クローリーからダウントンアビーを守るために難民救済運動をけしかけ、まんまと成功した祖母バイオレットの手腕には喝采。
tanzi

tanzi