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大奥のICHIのレビュー・感想・評価

大奥(2003年製作のドラマ)
4.6
「華の乱」大奥よりこちらの方が救いがあり、胸穏やかに観られる。
恨みや非道の中にも優しさと人間らしさがあり、家定や瀧山の非道な一面の裏に、彼らなりの奥ゆかしさがある。 

それが、「華の乱」で感じたゾンビ映画のような胸くそと違い、儚さを感じられる余裕を与えて、其処まで胸を痛めることなく観られる。

人が人を思う心情描写が細かく、温かみのあるカットが多いので救いがあり、観ていてしんどくならない。

「華の乱」よりロマンチックで穏やかなテイストで好きだ。

ep1~4 名セリフ

家定
「わたしたちは手水鉢の中の亀、そこに居続けることが仕事なのじゃ」

「たとえ闇のような宿命でも、生き抜く覚悟が決まれば、そこに光が差す。」

「ここで生き抜く覚悟ができた時、(その刀を)返してやれ」(瀧山に託した言葉)

徳子
「たとえ手水鉢の中の亀でも、わたしなら、自分の手と足で、逃げ出してみせます。たとえ乾き死のうとも」

瀧山
「大奥は女の牢獄。囚われ人は、多い方がたのしうございます」

ep5~7

浅野ゆう子演じる瀧山の気魄が、戻ってきた時に見せつけられる。お母様をも圧倒する有無を言わさぬ覇気がすごい。

ep8

間延びしていた。そろそろ菅野美穂が恋しくなってきた。もう彼女と薩摩青年の件はないのだろうか。

名セリフ
家定に似た僧
「仏の前に善も悪も、罪も罰もない」

ep9
間延びした回だった。本筋からそれ、怪談話で少し箸休め、という感じ。

ep9~最終回まで
徳子と薩摩青年が感動の再会を果たすも、徳子は薩摩青年のすすめを断り、独りで生きてゆくと言い、刀を返す。ここが、肝を抜かれたというか、すかされた感じで新しかった。

あんなに嫌がっていた大奥に、毒で死ぬこともなく家定亡きあと帰ることもなく残り、城に残る者の命まで保証して見事務めを終えられた。

奇跡的に約束を果たして迎えに来られた薩摩青年の胸に帰ることなく、独りで生きることを決意する徳子の姿。それは女性としての幸せ以上の何かを見ようとしているようで、かつて海辺で薩摩青年に「ただ貴方といられればそれで幸せだ」と言っていた徳子の姿ではなかった。

大奥が彼女を変え、薩摩軍から幕府の城に、女の牢獄にいる者達を救った。

とても強い感動を覚えた。

又、和宮が家茂のお母様に、「どうしていつも寂しさをお一人で抱え込んでしまうのですか」というシーンも感動した。

瀧山のように無碍に取り締まる訳ではなく、そのように昼酒に酔うお母様の心を汲んで寄りそうことで、お母様のささくれた気持ちを静めたシーンは、ただ秩序を振り翳すのではなく、人の気持ちを汲む大切さに気づかせてくれた。
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