山崎豊子の小説を原作とするドラマ。
男性目線だと、理不尽な女系の一族経営の会社の悲劇。
男系の一族経営だと、子どもが後継者になり得なければ会社を潰してしまうので、女系にして後継者になりうる人を婿に取れば、会社一族は安泰というものだが、女系になると女性は経営にあまり関わらないにも関わらず、影響力をもっていびつな力関係になる。
今でこそ一族経営は少なくなっているものの、仕事のことをよくわかっていないのに会社のことに口を出してくる経営者一族とかに腹立たしい思いをしたことがある人って少なからずいる。会社のお家騒動なんぞは本当に迷惑。男性から見れば、嘉蔵社長、宇一専務、良吉(娘婿)常務は善人ではないが、共感できるポイントが多い。やっぱり家族と仕事は別にしないいけないし、婿養子で逆玉という夢なんぞ見たくなくなる。
元々は戦後間もない頃の大阪船場の木綿問屋を舞台にした話を、現代の東京日本橋の会社組織の呉服屋に置き換えているので、ちょっと無理がある話かもしれない。とはいえ、現代における一族経営の会社の限界の話と見ることができる。
亡くなった社長の年の離れた愛人・文乃(米倉涼子)が主人公で、愛人といっても、婿入りした奥さんに先立たれているので不倫ではないが、文乃の妊娠によって一族の秩序が乱れたこともあるが、文乃は本妻の娘と変わらない歳ということによる生理的な嫌悪感も加わって娘たちからの仕打ちがひどい。父・嘉蔵は生前から見られたこうした娘たちの人格的な歪みも女系家族によるものと見て、文乃の存在を利用して、娘たちの女系家族からの解放を目論む。でも、もっと別のやり方があった気がする。
このドラマの見どころは文乃サイド、娘サイド(3人の娘の利害も違う)を狡猾に立ち回る一家の執事兼会社の専務・大野宇一役の橋爪功の芝居。