TOTO

ウォーキング・デッド シーズン11のTOTOのレビュー・感想・評価

2.0
『渡る世間はゾンビばかり――』

ファーストシーズンからシーズン11第24話まで、「渡鬼」ばりに長かった12年間に及ぶTWDとの付き合いが終了しました。

結論――。傑作ではない。むしろ嫌いだし、製作陣に対しては怒りすら感じています。

近未来、文明が崩壊し歩くゾンビだらけとなった地球を舞台に、数が多いだけで実際はのろくて弱いゾンビよりも、どちらかと言うと生き残った人間同士の熾烈な殺し合いを描いたドラマです。
最初は良かったんです。
事故で意識不明だった警察官リックが病院で目覚めると世界が崩壊していたという始まりです。よくできています。
そして既に夫は死んだものと諦めていた妻や息子との再会があり、その妻はかつての同僚と関係をもっていて、そこから物語が進んでいく過程の緊張感は流石でした。
それはひとえに”ショーランナー”(ドラマのシナリオや方向性を決める一番偉い人)を務めたフランク・ダラボン(『ショーシャンクの空に』監督)の手腕によるところが大きかったのしょう。
しかし製作のAMCはダラボンをシーズン1終了後に解雇し、その後は忠実なイェスマンだけをプロデューサーに揃えて製作を進めます。(あくまで想像だけど)
そのせいでシーズン2以降、だんだんご都合主義や理論破綻がまかり通るようになります。人間は喰われるのに犬や馬はなんで平気なんだとか。車やバイク、あげくに列車まで走らせてっけどガソリンや燃料はどうしてんだ? とか。
とにかくアメリカのドラマはシーズンを多く重ねることが最優先なので、程よく物語を締め括りたい作家性とは相反するんでしょう。
つじつまとかカタルシスとかそんなもんどうでもいいから、とにかく話題を作って話を引っ張れと――。その結果の12年間。
じゃあ見なきゃいいじゃんとなるんだけど、我が家はCSチューナー内蔵HDDで見たい映画やドラマをかなりの本数まとめ録りできるのね。
TWDは内容が不愉快過ぎて何度か視聴中断をしているんだけど、時々、第1話から最新話までイッキ見みたいな編成を組みやがるもんだから、つい魔が差して続きのシーズンを見てしまうみたいな。
その結果の敗戦処理的な12年でもあった訳です。
一視聴者としてTWDを許せなかった理由が幾つかあります。
まずはシリーズ最凶最悪のニーガンが、グレン(視聴者が感情移入しまくっていたアジア系の準主役)を身重の妻の目の前で撲殺するシーン(シーズン7第1話)が一番きつかったです。
鋲を巻いたバットで頭を殴られてグレンの頭が潰れて目が飛び出て、それでも妻に永遠の愛を囁きながら死んでいく。このシーンはこたえました。しばらく頭から消えなかった。
あとシーズン9で主人公リックが、シーズン10でその妻である準主役のミショーンが、それぞれマンネリだとかギャラだとか、ビジネス面の話だけで降板を決めたことも許せない。
だったらそこで物語を終わらすべきでしょう。志村けんと加藤茶の抜けたドリフを見ますかって話――。主人公がいなくなったんだからもう終わらせなきゃ。でもAMCはそこから2シーズンも続けやがった。これ絶対許せない。
そしてご都合主義の最たるものがシーズン終盤に登場した「囁く者たち」で、これゾンビっぽいマスクを被って首を傾げてだるそうに歩いたら、ゾンビたちにばれずに一緒に行進できるという、ウルトラ馬鹿設定。
もちろんちっとも怖くないし、そもそもシーズン1で明らかになったゾンビの習性「全身に腐肉を塗りたくれば人間だと気付かれない」という前提を思い切り壊しちゃってる。
しかも、これで2シーズンくらい引っ張りやがったし、最終シーズンでは主人公勢全員で行進してて何やってんだ馬鹿って話。
そして極めつけはニーガンの扱いですよ。
ニーガンはとにかく悪い奴で、さっきのグレンと妻マギーを始め、いろんな人を不幸に陥れてきたサイコパスです。それを積年の恨みを晴らしてリックがその首を掻っ切って殺して大団円となったんです。TWDにしては珍しくスカッと終わった筈だったんです。
しかしリックが去った翌シーズンで、実はニーガン生きてました設定になり、しかもいい人になっちゃってた。
リックの娘と意思疎通したり、みんなを助けたり、最後は夫の復讐を誓うマギーに謝罪するなど、視聴者もそろそろニーガン許してやるか的な空気が醸造されつつあった。
だからこそニーガンは最後、マギーやグレンの遺児である息子ハーシェルを守って死ぬべきでしょ。
多くの死を残虐に生み出してきた大悪人なのだから、最後は自分が奪った家族の幸せの為に身を投げ出す。
もちろん視聴者はニーガンを死なせたくないと思っているからこそ、シナリオとしてのカタルシスがあると思うんです。そうしたらきっとマギーも自然とニーガンを許そうってなったよね。
けれどこの薄ら馬鹿脚本家と制作陣は、ニーガンに対して特に何もなく、ただ幸せに結婚させて子供も出来て、ついでに世界に平和が戻ってめでたしめでたしで終わらせたのよ。
俺、ほんと、TWDのプロデューサーとか脚本家とかに会えたら、80年代、千葉で一番痛いと噂されたデコピンを眉間に叩きこんでやろうと思っています。
本気です。
TOTO

TOTO