さすらいの用心棒

名探偵ポワロ シーズン13のさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

名探偵ポワロ シーズン13(2013年製作のドラマ)
4.1
10年以上続いたポワロ・シリーズもファイナルシーズン突入!

『象は忘れない』
シリーズにおいては『カーテン』がポワロ最後の事件だが、執筆順では本作がシリーズ最後の作品にあたる。オリヴァ夫人が事件の捜査をする一方で、ポワロは別の事件を追うという珍しい形式。やがてこの二つの事件はつながってゆくわけだが、ミステリを読みなれている人にはトリックはすぐにわかってしまう。

『ビッグ・フォー』
ポワロ死す!? 第8シーズン以来登場しなかったレギュラーメンバーのジャップ警部、秘書のミス・レモン、ヘイスティングスが12年ぶりの再登場。正直これだけで感無量。『シャーロック』シリーズのマイクロフト役で知られ、また『シャーロック』の脚本も手掛けるマーク・ゲイティスが本作のシナリオを書いており、そこはかとなく漂う『シャーロック』感に納得。推理ものというよりも活劇に近い内容で、ファイナルシーズンで新たな面が開かれた印象。真相はかなりしょぼいが。

『死者のあやまち』
ドラマシーズンでは本作が最後の撮影に回されたらしい。オリヴァ夫人の登場も本作で最後。かなり複雑な内容だったが、ポワロの推理が始まると一本の糸のようにすべてが集約されてゆく快感がある。

『ヘラクレスの難業』
以前『二重の手がかり』でポワロと互いに好意を寄せていたロサコフ伯爵夫人が再登場。『ヘラクレスの冒険』という短編集からいくつかの短編を合作した内容だが、見事に一本のドラマに仕上がっている。部分的には「雪に閉ざされた山荘」ものに当たるが、それは『そして誰もいなくなった』に譲るとして、推理ものとしても、物語としても一見の価値がある作品だと思う。

『カーテン ポワロ最後の事件』
ポワロが車椅子に座る日が来るとは・・・。某推理作家のある偉大な名探偵も同じポワロと同様の末路を辿るが、これが名探偵の宿命なのだろうか。なんだか泣きそうになる。人間ドラマもさることながら、裏で行われていた複雑な模様を「物語」に昇華させるポワロの推理の衝撃。そのショッキングさは本作をシリーズで最も記憶に刻み込む回にしている。『オリエント急行の殺人』におけるポワロの回答と、正義の執念が宿った回だろう。

尋常じゃなく思い入れのあるシリーズなので、終わるのが寂しい。ジェレミー・ブレッドの『シャーロック・ホームズの冒険』でさえ成し得なかったシリーズ全映像化という快挙を成し得たデヴィッド・スーシェとスタッフには感謝の念しかない。