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ミスター・サンシャインのvenom9のレビュー・感想・評価

ミスター・サンシャイン(2018年製作のドラマ)
3.5
イ・ビョンホンの正統派二枚目作品。
大韓帝国時代の抗日運動が背景といえばその通りですが、鑑賞しての印象は誰が何をしようとしているのかよくわからない物語でした。
ヒロインのエシン(演:キム・テリ)たち抗日活動家ははよく「朝鮮のために」と言うのですが、劇中では規模の小さい暗殺や破壊活動に終始します。革命軍を組織しての大規模内戦とはならず、それもそのばず、支配階級である両班の一部に日本の進出を支持していた層があり、英国やロシアなど列強の承認もあり、単純な被支配国による宗主国へ戦いとなりえません。そのようなことは全く描かれず、いきなり日本が武力で朝鮮を制圧したような描かれ方であり、また、朝鮮の富を簒奪するのが目的という表現もありましたが、かなり雑な歴史考証です。そもそも正確な歴史考証など志向してないのでしょう。
また、林大使や阿部司令官、森など日本側の重要人物はすべて極悪非道な犯罪者のように描かれています。伊藤博文などもはや悪魔的です。
念のため申しますが、日本による朝鮮への進出はまさに帝国主義的であり、欧米列強に肩を並べ先進国の仲間入りしたい、というやや幼稚な動機によるものと考えており、私は支持していません。
素人考察が長くなりましたが、本作を鑑賞するにつけ真っ先に倒すべきは差別的な両班たちではなかったかと思います。物語がわかりやすい悪者を求め、それは広義の同胞たる両班ではなく日本人が都合よかったのでしょう。一方で、日本人による非人道的な行いもあったとは思います。
一部視聴者が本作を酷い反日プロパガンダ作品だと評しているのが散見されますが、私はそこまで強い制作意図は感じません。本作の脚本家、キム・ウンスクがどのような考えでこのように歪な筋立てとしたのか定かではありませんが、出演者の参加動機に反日志向はないと信じたい。
さて、本作悲劇的な結末を迎えますが、必ずしもそうなる必然性はなかったかな。犠牲になったキャラクター多数で、悲劇性を先鋭化させるための筋立て、結末なのかなと思います。
奴婢に生まれ親を惨殺され逃げるように国を出たユジン(イ・ビョンホン)がエシンへの愛に行き、最後は朝鮮へ身を捧げる姿、素晴らしかったです。ク・ドンメ(演:ユ・ヨンソク)は新撰組ばりの人斬りでしたが、ご尊顔がかわいいので憎めないですね。
(2023年10月 NETFLIXで鑑賞)
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